自由診療でも医療費控除の対象が!確定申告でいくら戻る?不妊治療・レーシック・ICL・歯科矯正・インプラント…
医療費控除と聞くと、保険が適用される治療だけが対象かと思いがちですが、実は自由診療でも医療費控除の対象となるケースがあります。不妊治療やレーシック、ICL、インプラント、歯科矯正(成長過程の子どもなど)などの保険が適用されない治療費でも、条件を満たせば確定申告で医療費控除の手続きをすることで、税金が軽減されるのです。
ただし、いくら戻るのかは、支払った医療費や、所得税の課税対象所得に応じた税率によるため、具体的な金額が分かりにくいことがあります。
この記事では、どのような自由診療が医療費控除の対象になるのか、また、いくら戻ってくるのかについて、詳しく解説します。特に、いくら戻るのか(軽減される税額)については、分かりやすい年収の目安ごとのグラフを用意したので、一目で知ることができます。
確定申告は面倒だというイメージをお持ちの方も、手間をかけてでも医療費控除を活用すべきかどうか判断できるでしょう。自由診療の費用が家計に重くのしかかりそうなら、医療費控除を活用して負担を軽減することをぜひご検討ください。
・高額な自由診療が医療費控除の対象か知りたい人
・医療費控除でいくら戻るか知りたい人
・確定申告が面倒だと感じる人
自由診療でも医療費控除の対象が!
自由診療でも医療費控除により、所得税や住民税の節税効果を得られることがあります。医療費控除は保険が適用される医療費だけが控除対象と思われがちですが、実は一部の自由診療も医療費控除の対象になることがあるのです。
自由診療には、たとえば不妊治療やレーシック、ICS、インプラント、歯科矯正(成長過程の子どもなど)などがあります。これらの治療は高額になることが多いため、医療費控除を活用することで大きな節税効果を期待できる場合があります。
自由診療が医療費控除の対象となる条件
自由診療が医療費控除の対象となるには、次の条件を満たす必要があります。
- 自分や生計を一にする配偶者その他の親族のために支払った医療費であること。
- 1月1日から12月31日までに実際に支払った医療費が10万円以上、もしくは総所得の5%以上であること。
- 対象となる医療費であること。
例えば、医師、歯科医師による診療・治療の対価や、治療のための施術などが対象に含まれます。また、通院費や医薬品の購入の対価なども対象になることがあります。
ただし、美容目的で行った整形手術の費用などは対象外です。
具体的な医療費控除の対象一覧、対象外一覧の例については、次の国税庁のページに詳しく掲載されています。
出典:「医療費を支払ったとき」(国税庁)(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/04_1.htm)
いくら戻る?医療費控除で軽減される税額の計算方法
まず、医療費控除額は次のように計算できます。
医療費控除額(最大200万円) の計算方法
その年中に支払った医療費 - 保険金などで補填される金額 - 10万円または総所得金額の5%(少ない方)
この医療費控除額はあくまで、課税対象となる所得から差し引ける額であるため、実際にいくら軽減されるのかは、税率をかけて計算する必要があります。
税率は所得税と住民税でそれぞれ次の通りです。
- 所得税の税率
所得が多いほど税率が高くなる仕組みになっています。課税対象の所得に応じて、例えば5%、10%、20%、23%、…などと税率は異なるのです。
参考:「No.2260 所得税の税率」(国税庁、タックスアンサー、https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm)
- 住民税の税率
住民税のうち所得に応じた部分(所得割)については、一律に10%となっています。
以上より、いくら軽減されるかは次のようになります。
医療費控除により軽減される税額
医療費控除額 × {所得税の税率 + 住民税(所得割)の税率}
しかし、自分の所得税の税率が分からず、結局いくら戻るのかピンとこないかもしれませんね。そこで一目で分かるようにグラフ化してみます。
いくら戻るかを年収ごとにグラフ化
医療費控除により軽減される税額は課税対象所得に応じた所得税率によって異なりますが、肝心な自分の所得税率が分からない方も多いでしょう。そこでこの記事では、「年収の目安ごとに戻ってくる金額」をグラフで分かりやすく示します。
ただし、所得税の税率に影響する課税対象所得は、厳密には様々な要素により変わるため、以下のグラフでは次の条件を設定しています。
グラフの設定条件
- 収入は給与・賞与のみ
- 所得控除は医療費控除以外に、基礎控除と社会保険料控除のみ
- 一定の標準月額報酬のもと、健康保険料・介護保険料(40歳以上)、厚生年金保険料の支払いがあり
- その他の詳細な設定条件と、税率の導出データはこちらをご参照ください。
所得控除には配偶者控除、生命保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、寄付金控除、…など様々な種類があり、どれが適用されるかは個々のケースで異なるため、以下のグラフ中の年収と税率の対応関係はあくまで目安です。
医療費の支払額に合わせて見やすいように2段階のスケールで示します。
その年中に支払った医療費が50万円まで
その年中に支払った医療費が200万円まで
以上のグラフより、自分の年収と支払った医療費をもとに、いくら戻るのかを大まかに把握できるでしょう。こんなに戻ってくるなら、手間をかけてでも確定申告しようと思うのではないでしょうか?
確定申告は面倒?手続きの簡単な流れ
確定申告を行うことに対して「手間がかかる」という印象を持つ方も多いかもしれません。しかし、前出のグラフのとおり、医療費控除を活用することで家計への負担を大きく軽減できる場合があるので、手間をかける価値は十分あるでしょう。
確定申告の手続きを次の3段階に分けると、非常にシンプルです。
- 領収書をもとに医療費明細書を作成、または医療保険者等が発行した医療費通知を用意する。
- 確定申告書を作成し、医療費控除の額を記入する。
- 確定申告書に、医療費明細書または医療費通知書を添付して、税務署に提出する。
税務署に提出、郵送で送付、e-taxで電子的に提出などの方法があります。
手順の詳細については、国税庁の次のホームページでも分かりやすく案内されています。
「確定申告特集 医療費控除を受ける方へ」(国税庁)(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tokushu/keisubetsu/iryou-koujo.htm)
まとめ
自由診療にかかる医療費も、条件を満たせば医療費控除の対象となり、確定申告によって税金の還付を受けることができます。不妊治療やレーシック、ICS、インプラント、歯科矯正など、高額な治療費に対しては、家計への負担を大きく軽減できることがあるのです。
また、軽減される税額は支払った医療費の他、課税所得に応じた所得税率によるため、自分の状況に合った金額を把握することが大切です。確定申告の手続きは少々手間がかかるものの、節税効果を考えれば利用する価値は十分あります。
この記事を参考に、いくら戻るのかをざっくりと把握し、自由診療の費用負担を軽減することをお勧めします。
とはいえ、個人の価値観や諸事情により、どうしても医療費控除の手続きができない、もしくは医療費控除の対象外の治療を受けたいというケースもあります。その場合、高額な医療費で家計がひっ迫してから慌てないように厳しく見積もり、対策を考えておくことをお勧めします。生活費、教育費、働き方、投資、保険、節税など、様々な面での見直し方法がありますので、総合的に家計を見直すと良いでしょう。