60歳定年退職後の給料ダウン対策！失業給付後の高年齢再就職給付金はいくら？
えふぴ郎＠安心家計術
60歳で定年退職を迎え、長年のサラリーマン生活に一区切り。しばらく失業給付（雇用保険の基本手当）を受け取りながら次の仕事を探し、何とか再就職が決まった場合でも、「現役時代より給料が大幅に減った…」という現実に直面するかもしれませんね。
そんな時に「高年齢再就職給付金」を活用することで、毎月数万円の差がつくことがあります。「たかが数万円」と思うかもしれませんが、現役時代よりかなり収入ダウンしている状況であれば「されど数万円」です。貴重な収入源であり、忘れずに申請することをお勧めします。
この記事では、高年齢雇用継続給付のうち高年齢再就職給付金の位置づけと受給条件、さらに老後資金への効果について、支給額シミュレーションも交えてわかりやすく解説します。
・定年退職後に再就職予定
・再就職後の収入減対策を知りたい
・好きな仕事をしながら自由時間も確保したい
高年齢雇用継続給付における位置づけ
高年齢雇用継続給付には次の２種類があり、いずれも60歳以降も働く人の賃金低下を補うための雇用保険の給付制度です。
- 高年齢雇用継続基本給付金
60歳以降も失業保険を受け取らず、継続雇用される場合 - 高年齢再就職給付金
60歳以降に失業手当を受け取っていたが、一定の支給日数を残して再就職した場合
どちらも「賃金が60歳時点より75％未満に低下」という共通条件がありますが、雇用や失業給付の状況に応じて給付金の種類が異なります。
高年齢再就職給付金で再就職後の収入減を補う
高年齢再就職給付金の概要
高年齢再就職給付金は、定年退職後に仕事を探しながら失業手当を一部受け取り、再就職後の賃金が60歳時点の75％未満に下がった場合に支給されます。定年後に新しい職場で働き始めたものの、賃金が急激にダウンした状況で、収入が補填されるのはありがたいですね。
例えば、定年退職後は同じ会社で継続雇用ではなく、収入ダウンを覚悟してでも、自分のやりたい仕事を優先して再就職する方には、大変魅力的な制度です。
高年齢再就職給付金の受給条件
高年齢再就職給付金を受給するためには、厚生労働省のページの次の引用にある受給資格を満たす必要があります。
出典：「Q＆A～高年齢雇用継続給付～」-「Q１ 高年齢雇用継続給付の受給資格を教えてください。」（厚生労働省、https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000158464.html#Q1、2025年8月12日アクセス、太字・黄色マーカーは筆者）
- 60歳以上65歳未満の一般被保険者であること。
- 基本手当についての算定基礎期間が5年以上あること。
- 再就職した日の前日における基本手当の支給残日数が100日以上あること。
- 1年を超えて引き続き雇用されることが確実であると認められる安定した職業に就いたこと。
- 同一の就職について、再就職手当の支給を受けていないこと。
高年齢再就職給付金はいつまでもらえる？
基本手当の支給残日数により、再就職日の翌日から次の期間が経過する日の属する月までです。
- 200日以上のとき：2年
- 100日以上200日未満のとき：１年
ただし、上記の期間内であっても65歳に達したら、その月までとなります。
参考：「Q＆A～高年齢雇用継続給付～」-「Q２ 高年齢雇用継続給付の支給を受けることができる期間はいつまでですか。」（厚生労働省）
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000158464.html#Q2
高年齢再就職給付金の支給額はいくら？
賃金日額と支給額の計算方法
一定の範囲で賃金低下率※1が低いほど（大きく低下するほど）、給付率も高くなります（賃金月額の最大10％※2）。
※1:支給対象月に支払われた賃金額／60歳到達時の賃金月額×100
※2:令和7年4月1日以降に受給資格を満たした方の場合
参考：「令和７年４月１日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します」（厚生労働省）
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000160564_00043.html
支給率は複雑な計算式で計算されますが、目安を知るには厚生労働省の次のページの早見表が便利です。
参考：「Q＆A～高年齢雇用継続給付～」-「Q８ 高年齢雇用継続給付の支給額はどのように計算されるのですか。」（厚生労働省）
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000158464.html#Q8
シミュレーション
～定年退職後の収入ダウン：年収600万円 → 300万円に半減の場合～
では実際に、定年退職後の再就職で賃金が大きく低下した場合、高年齢再就職給付金はいくら給付されるのでしょうか？ここでは次の設定条件でシミュレーションしてみます。
シナリオの設定条件
| 比較項目 | 60歳到達時 | 再就職後 |
| 年収(賞与無し) | 600万円 | 300万円 |
| 賃金月額(額面) | 50万円 | 25万円 |
| 賃金月額(手取り概算) | 40万円 | 20万円 |
高年齢再就職給付金の計算
賃金低下率 = 25万円/50万円 = 50%なので、支給率は最高の10%となります。
つまり、再雇用後の賃金25万円の10%で2.5万円となります。
以上の収入（賃金手取り月額＋高年齢再就職給付金）の変化をグラフに表すと、次のようになります。
（賃金手取り月額＋高年齢再就職給付金）
再就職後のグラフを見ると、高年齢再就職給付金は無視できないぐらい大きいなという印象ではないでしょうか？
失業給付終了後に受け取るメリットと活用効果
高年齢再就職給付金は高くてもたかが10%？
前のシミュレーション結果を見て、たかが10%(毎月2.5万円)だけかと思ったかもしれません。それは現役時代の収入の感覚が残っているからです。
確かに、このシミュレーションの例のように現役時代に毎月50万円(手取り約40万円)も稼いでいたら、ささいな額に思えるでしょう。
されど10%！家計の安定と自由時間をもたらす効果
しかし、定年退職後の再就職で賃金が大幅に下がる場合、10%は大変貴重です。仕事内容や賃金にもよりますが、仮に１日１万円の仕事の場合、2.5万円稼ぐには2日半も働く必要があるからです。
この例では、毎月2.5万円の高年齢再就職給付金をもらえば、働く時間をその分調整することで、自由時間を２日半も確保できますね。定年退職後の生活の質を高める大きな効果があるでしょう。
申請手続き
高年齢再就職給付金を受けるには、給料が減ったら自動的に支給されるわけではなく、申請が必要です。事業主を経由して、受給資格の確認や申請手続きを実施します。（初回の申請手続きだけでなく、２回目以降も申請が必要です。）
詳細は厚生労働省の次のページを参考にしてください。
参考：「ハローワークインターネットサービス」-「雇用継続給付」（厚生労働省職業安定局）
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_continue.html
まとめ
60歳で定年退職すると、多くの場合は現役時代より賃金が大きく下がります。高年齢再就職給付金は、高年齢雇用継続給付の一部として、定年退職後の給料ダウンを補い、老後資金戦略にもつながる大切な制度です。
賃金が60歳時点の75％未満に下がった方が対象で、最大10％（月数万円）が支給されます。長期では数十万円規模となり、老後の生活や働き方にゆとりを生みます。
受給できる期間は基本手当の残日数によりますが、1〜2年の収入安定は、好きな仕事を選びながら、自由時間も確保したいですね。制度の仕組みを正しく理解し、忘れずに申請して、あなたのセカンドライフをより豊かにしていきましょう。
とはいえ、個人の状況により条件を満たせず、高年齢再就職給付金を受給できないケースや、諸事情によりあえて受給しないケースもあります。その場合、再就職後の給料ダウンで生活が苦しくなってから慌てないように厳しく見積もり、対策を考えておくことをお勧めします。他の制度を適用できないか確認することも重要ですが、生活費、教育費、働き方、投資、保険、節税など、様々な面での見直し方法がありますので、総合的に見直すと良いでしょう。
