抵当権付き賃貸は競売で最悪退去も?6か月猶予とお金の備えで家計対策!

「契約しようとした賃貸物件に抵当権が付いている」と聞いて、不安を感じた入居予定者もいるのではないでしょうか?
賃貸物件に付いている抵当権は、大家さんがローンを借りるために設定されているもので、珍しいことではありません。ただし、もし大家さんのローン返済が滞れば競売にかけられる可能性があり、退去させられるのではと心配になるのも無理もありません。
実は、競売になって退去を求められてもすぐに立ち退く必要はなく、民法上は6か月の猶予期間が認められています。
この記事では、抵当権付き賃貸の仕組みや競売時の流れ、さらに不測の事態に備えるお金の準備を解説します。生活の基盤である住まいと家計を守るために、今からすべき備えを確認しておきましょう。
・賃貸物件を契約予定の人
・入居する賃貸物件の抵当権や競売が不安な人
・家計のリスクに備えたい人
なぜ賃貸物件に抵当権?
抵当権はローン返済の担保のため
抵当権とは、金融機関からお金を借りた人がローンを返済できなくなった場合に、金融機関が土地や建物を売ってお金を回収できる権利のことです。
銀行などが大家さんに融資するときに、建物や土地に抵当権設定登記が行われ、法的な担保となるのです。
「抵当権」と聞くと危険なイメージを持つかもしれませんが、大家さんがローン返済中の賃貸物件には、抵当権が設定されているのが一般的です。
抵当権付きは重要事項説明で明示
賃貸物件を仲介する不動産業者は、契約前に宅地建物取引士(宅建士)に重用事項説明をさせる義務があります。また、宅建士は重要事項説明書に記載された抵当権について正しく説明する必要があります。
それにより借主は、契約前にその物件に抵当権が付いていることを知ることができるのです。
ちなみに、登記事項証明書の権利部「乙区」欄の抵当権に関する記載を見れば、どの金融機関がいくらの金額で担保を取っているのかも分かります。
競売になったらどうなる?借主の権利と6か月の猶予期間
抵当権実行による競売の流れを簡単に解説
大家さんがローンを返済できなくなると、金融機関は抵当権を実行し、次の流れで競売されます。
競売前後の流れ
ローン滞納
↓
金融機関が裁判所に競売を申立て
↓
競売開始
↓
競落(落札)
↓
所有権の移転
競売後すぐ退去ではない!民法上の6か月猶予
民法第395条の次の引用のとおり、抵当権実行による競売が行われても、賃借人は6か月間の引渡猶予期間が認められています。
(抵当建物使用者の引渡しの猶予)
出典:e-Govポータル(https://elaws.e-gov.go.jp/)(2025年10月18日アクセス、太字・黄色マーカーは筆者)
第三百九十五条 抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者であって次に掲げるもの(次項において「抵当建物使用者」という。)は、その建物の競売における買受人の買受けの時から六箇月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない。
つまり、買受人(新しい所有者)が明渡しを請求したとしても、半年間は住み続けることが可能なのです。
その間に新しい物件を探したり、引越しの準備をしたりする時間を確保できることは大きな安心材料ですね。
また、競売で物件を落札した新しい所有者(買受人)との間で、新たに賃貸借契約が成立すれば、住み続けることもできます。
競売に至る可能性は低い?
金融機関も競売は避けたい理由
金融機関にとっても、低価格になりやすい競売はできれば避けたいところです。それよりも、任意売却したほうが高い価格で売りやすく、債権を回収しやすいからです。
任意売却とは?
任意売却とは、物件を売却してもローン残高を返済しきれない状況の場合に、金融機関との合意のもとで売却する方法です。
この場合、賃貸借契約は買受人(新しい大家さん)に引き継がれます。つまり、入居者は住み続けることができるのです。
競売・退去に備えるお金の準備
引っ越しに必要な費用を把握しよう
もし競売になり、退去を求められた場合に備えて、まず把握しておきたいのが引越し費用です。
一般的には次のような費用が発生します。
- 新居に入居する際の敷金・礼金・保証料・保険料・仲介手数料
- 引越し代
- 新生活の初期費用(家具・家電など)
- 新生活のコスト増(通勤・通学費、家賃など)
旧居の敷金返還は期待できない?
旧居の退去時に、旧居に入居した時に預けた敷金の返還請求を買い請け人(新しいオーナー)に対してはできません。元の大家さんに請求することになりますが、ローン返済が滞るぐらいの状況なので、返還されない可能性が高いです。
そのため、旧居の敷金返還は期待せずに必要なお金を見積もることをお勧めします。
家賃の二重払いや新居の家賃負担増も
競売後6か月の猶予期間中も、しばらく住むのであれば賃料等を支払い続ける必要があります。そのため、一時的に新居との重複期間が生じると、賃料の二重払いが生じることもあります。
また、6か月の猶予期間中に理想的な新居が見つからず、家賃が高い物件に仮住まいとなってしまう状況も考えられるでしょう。
生活防衛資金の確保が安心のカギ
収入が途絶えたときの生活防衛資金と同様な備えをしておくことをお勧めします。生活の基盤である住まいに不測の事態があると、新居や仮住まいの費用、引っ越し代などで収入の多くが消えてしまうおそれがあるからです。
次の記事も参考に、生活防衛資金をしっかりと準備しておきましょう。
まとめ
大家さんが賃貸物件のローンを返済中である場合、抵当権付きであるのが一般的です。不安になるかもしれませんが、仮に返済が滞り競売となった場合でも、民法により6か月の引渡猶予が認められています。その間に新居を探したり、引越し費用を準備したりする時間を確保できるのです。
もっとも、引っ越しや新居・新生活のために想定外の出費がかかることもあります。こうしたリスクに備えるためにも、引っ越しにかかる費用の見積もりや生活防衛資金の確保をしておくことが大切です。知識と備えがあれば、万一の競売にも落ち着いて対応できます。
とはいえ、個人の価値観や諸事情により、生活防衛資金の確保が難しいケースもあります。その場合、対策を考えておくことをお勧めします。生活費、教育費、働き方、投資、保険、節税など、様々な面での見直し方法がありますので、総合的に見直すと良いでしょう。
