自営業・フリーランスは老後5000万必要?付加年金やめて国民年金基金+iDeCoなら?
「自営業やフリーランスの老後資金は2000万円では足りない?本当に5000万円も必要? 」会社員と違って厚生年金がない自営業者やフリーランスの方は、老後資金が不安の種です。
そこで注目されるのが、iDeCo(個人型確定拠出年金)です。しかし、市場の変動で運用資産が目減りするリスクもあり、実際に何歳から何歳までいくら受け取れるのか、生涯にわたって十分なのかどうかは不透明です。
では、手堅い選択肢として付加年金や国民年金基金(1口目は終身、2口目以降も終身を選択可)はどうでしょうか?これらは終身年金・確定給付として安心感がありますが、どちらを選ぶべきか迷ってしまうこともあるでしょう。
この記事では、iDeCo、付加年金、国民年金基金のメリット・デメリットを詳しく比較し、自営業者やフリーランスが老後資金を準備するためのプランを考察します。
・iDeCo、付加年金、国民年金基金のメリットとデメリット
・自営業やフリーランスの方の制度の選び方のヒント
・老後資金を効率的・安定的に準備するための考え方
各制度のメリット・デメリットの比較
自営業者やフリーランスの方が老後の資金計画を立てる際には、iDeCo、付加年金、国民年金基金の3つの制度の特徴をしっかり理解することが大切です。ここでは、それぞれの制度のメリットとデメリットについて、分かりやすく解説します。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
メリット
- 運用効果
投資信託等の運用商品を選択し、運用による利益を得たり、リスクを分散できる可能性があります。 - 節税効果
iDeCoの掛金を全額、所得控除(小規模企業共済等掛金控除)することができます。また、運用による利益も非課税です。
デメリット
- 元本割れリスク
市場の動向によっては、期待通りのリターンが得られない可能性があります。 - 受取開始年齢
60歳まで原則として引き出すことができないため、流動性に制約があります。
付加年金
メリット
- 少額の掛け金
月々400円という少額の追加納付で、将来の年金を増やすことができます。 - 終身での受け取り
年金を終身で受け取ることができます。長生きすればするほどお得です。
デメリット
- 受取額も大きくない
掛金が少額であるため、大幅な年金増額は期待できません。例えば、30年(360か月)納付した場合、200円×360か月=72,000円が年金額になります。毎年の年金額を何十万円も増やせるわけではないのですね。 - 国民年金基金と同時加入不可
国民年金基金と同時加入ができないため、複数の制度を併用したい場合は選択肢が限られます。
参考:付加年金(日本年金機構)のホームページ
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/sonota-kyufu/1go-dokuji/20140625.html
国民年金基金
メリット
- ライフプランに合わせた掛金と年金
掛金の額や年金の受け取り方を選べるため、自分のライフプランに合わせた選択が可能です。 - 終身での受け取り
1口目は終身年金、2口目以降は任意で終身年金を選択できます。終身年金は、長生きすればするほどお得です。 - 節税効果
掛金を全額、所得控除(社会保険料控除)することができます。
デメリット
- 掛金の高さ
付加年金と比べると掛金が比較的高額であるため、毎月の支払いが負担になる可能性があります。
これらの制度をしっかりと理解し、自分に最適な老後資金計画を立てることが重要です。各制度のメリットとデメリットを比較検討し、将来の安心につながる選択をしましょう。
自営業・フリーランスが必要な老後資金は5000万?
自営業者やフリーランスの方にとって、老後の資金計画は非常に重要です。会社員とは異なり、厚生年金(※)がないため、国民年金(老齢基礎年金)だけでは十分に生活できない可能性があるからです。
※厚生年金の受給額などの参考:「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/001233406.pdf
なお、老齢基礎年金の満額は年によりますが、例えば「816,000円」(令和6年度)で、月々に換算すると68,000円です。
仮に毎月約14万円の不足が生じるケースを考えると、老後30年間生きる場合、単純計算で14万円 × 12か月 ×30年 = 5,040万円もの資金が不足することになります。
毎月の支出は個人の生活スタイル、健康状態、寿命などにより様々なので一概に言えませんが、やはり厚生年金がない自営業やフリーランスの方にとって、老齢基礎年金だけで老後の生活を充分に支えることは難しそうですね。
このような状況を踏まえ、iDeCoや国民年金基金などの選択肢を検討し、早めに老後の資金計画を立てることが重要です。
効率的かつ安定的な老後資金の準備方法
自営業者やフリーランスの方が老後資金を効率的かつ安定的に準備するには、複数の制度の特性を活かしたバランスの取れた戦略が重要です。一般的に、収益性を追求するほどリスクも高まり、安全性を重視すると収益が限定されがちだからです。
例えば、付加年金は終身で受け取れますが、掛け金が少なく、受取額も限定的です。そのため、付加年金をやめて、国民年金基金とiDeCoを併用する方法が考えられます。
国民年金基金(1口目は終身年金、2口目以降も終身年金を選択可能)を活用すれば、長生きリスクに備えつつ安定した年金が得られます。一方、iDeCoでは、運用益による資産増加の可能性と税制上のメリットがあります。
これらの制度を組み合わせて活用することで、リスクを分散しながら、無理のない資産形成を進めることが可能です。
では実際に、付加年金、国民年金基金、iDeCoの活用により、効率的かつ安定的に老後資金を準備できるのでしょうか?この記事では、次のシナリオの設定条件で、老後の家計をシミュレーションしてみます。
シミュレーション
〜付加年金、国民年金基金、iDeCoの活用で将来の家計は?〜
シナリオの設定条件
- 家族条件
家族条件 | 歳(現在) | 生計から外れる |
夫 | 30 | 100歳で死亡 |
妻 | 27 | 100歳で死亡 |
第1子 | 0 | 23歳で独立 |
第2子 | 3年後に誕生 | 23歳で独立 |
- 共通条件(夫)
夫の現役時代の年収と老齢基礎年金は次の通りとします。
(実際にはその年や条件により異なりますが、本シミュレーションでは一定の平均値とします。)- 現役時代(30-60歳)の年収
平均520万円 - 小規模企業共済の受取(60歳)
1200万円 - 老齢基礎年金
480か月(40年)分の保険料を納め、65歳以降は満額約82万円を受給。
- 現役時代(30-60歳)の年収
- 活用する制度による比較条件(夫)
夫が利用する制度により3つのケースを想定します。
夫の比較項目 | ケース1 | ケース2 | ケース3 |
活用する制度 | 付加年金のみ | 国民年金基金のみ | 国民年金基金+iDeCo |
現役時代の付加保険料または掛け金(夫30-60歳の年間) | 0.48万円 | 57万円 | 国民年金基金:57万円 iDeCo:24万円 |
年金手取り(老齢基礎年金+活用した制度による年金 - 税金・社会保険料) (夫65歳-の年間) | 87万円 | 185万円 | 233万円 |
- その他の詳細データはこちらを参照。
1. 付加年金だけだと
ではまず、付加年金だけを活用した場合について、シミュレーションしてみます。このケースでは、毎月400円ずつ付加保険料を支払うだけならと気軽に続けてみたのです。この場合、将来の家計はどうなるでしょうか?
現役時代は保険料負担が少なく、かなりゆとりがあるかに見えました。しかし老後はどんどん貯金を取り崩し、資金ショートしてしまいますね。付加年金による上乗せ分が年額72,000円 (200円×12か月×30年)だけというのは、やはり長生きリスクに対して不十分でした。
2. 国民年金基金だけだと
では次に、国民年金基金を活用するケースについて、シミュレーションしてみます。このケースでは、長生きリスクに備えて、サラリーマンの厚生年金並みに終身でたくさん年金を受け取りたいと考え、終身型の国民年金基金(1口目、2口目以降も終身年金のB型)を活用したのです。毎月の保険料は合計47,500円にもなります。
この場合、将来の家計はどうなるでしょうか?
おっ、現役時代の掛け金が大きい分、現役時代の金融資産はケース1より減りますが、逆に資金寿命が延びますね。
しかしまだ、80代以降も長生きする場合に資金ショートしてしまいそうです。
3. 国民年金基金+iDeCoなら
では最後に、国民年金基金とiDeCoを組み合わせて活用するケースについて、シミュレーションしてみます。このケースでは、国民年金基金(2口目以降も終身年金を選択)の安定性だけでなく、iDeCoも活用することで収益性も確保しようとしたのです。
iDeCoを現役時代(夫30-60歳)で毎年24万円ずつ積み立て、老後(夫65-94歳)で約67.5万円ずつ取り崩し、ずっと運用利回り3%で運用できたものとします。
この場合、将来の家計はどうなるのでしょうか?
おおっ、これなら一生安心して暮らしていけそうですね。国民年金基金(終身年金)とiDeCoを組み合わせることで、効率的かつ安定的に老後資金を準備することができました。
ただし、iDeCoの運用利回りは保証はなく、元本割れのリスクがあるため、許容範囲のリスクなのか注意も必要です。
まとめ
自営業者やフリーランスの方が老後のために十分な資金を確保するには、複数の制度のメリット・デメリットを理解し、上手に組み合わせることが重要です。
例えば、付加年金は掛け金が少なく、終身で受け取れるというメリットがありますが、受取額が限定的であるため、これ一本では不十分な可能性があります。
一方、iDeCoや国民年金基金を併用することで、安定性と収益性のバランスを取ることができ、長生きリスクにも備えられます。
これらの各制度のメリット・デメリットを理解し、早めに計画を立てることで、安心して老後を迎える準備が整うでしょう。
とはいえ、個人の価値観や諸事情により、どうしても老後の資産形成を優先できないケースもあります。その場合、老後になってから老齢基礎年金だけで生活が苦しくならないように厳しく見積もり、対策を考えておくことをお勧めします。生活費、教育費、働き方、投資、保険、節税など、様々な面での見直し方法がありますので、総合的に見直すと良いでしょう。