浪人すべきか迷ったら?予備校費用と生涯年収が及ぼす影響と判断ポイント!
「ガーン!志望大学に落ちた・・・。浪人して憧れの◯◯大学を目指すべきか?」
この大学に入ったら、思いっきり勉強も、バイトも、サークルにも励み、恋愛もして・・・と、胸を膨らませて受験勉強を頑張ってきたのに、大きなショックを受けることでしょう。浪人してもう一度チャンスが欲しいと思うのも無理もありません。しかし、色々と考え込んでしまうのではないでしょうか?
- 浪人の予備校の費用はどれだけかかるのだろう?
- 社会人になって働くのが1年遅れて、生涯年収にも影響するのでは?
- いやいや、浪人してでも志望大学に入れば希望の仕事に就けて、バリバリ稼げるのだろうか?
浪人して志望校を目指すべきか、滑り止めで受けた大学に現役で進学すべきか、悩ましいところです。一体どのように判断すればよいのでしょうか?
浪人すべきか迷った時に、予備校の費用だけでなく、生涯年収やその他の影響を踏まえて判断するポイント
浪人すべきかの判断ポイント3点
浪人すべきか迷ったら、個々の状況に応じて判断する必要があります。その際の判断ポイントは次の3点です。
- ポイント1:予備校の費用の負担
- ポイント2:生涯年収
- ポイント3:志の高さ
なぜこれらのポイントで個々に判断?
これらのポイントは個々の状況で異なるためです。具体的には次のとおりです。
- ポイント1:予備校の費用の負担
親の経済力や考え方は様々であり、予備校の費用を負担してもらえるとは限りません。大学1年分にも匹敵し得る予備校の費用を一旦は親が負担したとしても、その後の大学進学費用が不足し、結局は奨学金を借りることになるかもしれません。その場合、将来子どもが社会に出てから返済負担することを想定する必要があります。この点は親子でよく話し合いましょう。 - ポイント2:生涯年収
生涯年収は浪人することで増えるケースもあれば、減るケースもあります。- 社会人として働く期間が1年少なくなることで、生涯年収が減る可能性。
- 逆に、浪人して希望どおりの進路に進むことで、高度な専門知識や資格を得られたり、仕事のモチベーションも上がることで、生涯年収が増える可能性。
- ポイント3:志の高さ
現役の受験生は目先の合格のことで一杯一杯になりがちで、何のために大学に進学するのか目的を見失っていることさえあります。将来のなりたい自分が明確で、時間やお金をかけてでもこの大学に進学する必要があるのか、自分に問いかけましょう。
浪人生はどのくらい?
浪人する人はどれくらいいるのでしょうか?令和4年度「学校基本調査」(文部科学省)のデータをもとに作成した次の表によると、19歳以上の入学者の割合は2割弱です。厳密に19歳以上=浪人ともかぎりませんが、目安にはなるでしょう。
年齢別入学者数(男女計、国公私立計、昼間・夜間計) | ||
年齢 | 入学者数(人) | 割合(※3) |
計 | 635,156 | 100% |
18歳 | 514,637 | 81% |
19歳 | 94,204 | 15% |
20歳 | 14,599 | 2% |
21歳 | 5,060 | 1% |
: | : | : |
令和4年度「学校基本調査」(文部科学省※1)のデータ(政府統計の総合窓口(e-Stat)※より)をもとに作成 |
※1:https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/1267995.htm
※2:https://www.e-stat.go.jp/
※3:割合は筆者計算
親御さんの中には、「あれ?自分たちのときに比べて、浪人は少ないなぁ。」と感じる方もいるかもしれませんね。実際、筆者の学生時代は周囲の半分近くが浪人生だったことに比べると、随分と少ない印象です。
少数派の浪人をあえて選択する人は、どのように判断しているのでしょうか?この記事では、次のシナリオの設定条件で、将来の家計をシミュレーションしてみます。
シミュレーション
〜浪人するかどうかで将来の家計は?〜
シナリオの設定条件
- 家族条件
家族条件 | 歳(現在) | 生計から外れる |
将来の夫※ | 22 | 100歳で死亡 |
将来の妻 | 19 | 100歳で死亡 |
将来の第1子 | 9年後に誕生 | 23歳で独立 |
将来の第2子 | 12年後に誕生 | 23歳で独立 |
※大学入試で失敗し、現役or浪人の選択の結果、22歳以降の家計をシミュレーション
- 比較条件
比較項目 | ケース1 | ケース2 | ケース3 |
現役・浪人 | 現役 | 1年浪人 | 1年浪人 |
進学先の大学 | 滑り止め | 第1志望 | 第1志望 |
仕事のモチベーション | 並 | 高い | |
給与水準 | 並 | 高給取り | |
年収 | 年収約360万(22歳)→680万(60歳)まで昇給 | 年収約360万(23歳)→670万(60歳)まで昇給 | 年収約400万(23歳)→760万(60歳)まで昇給 |
生涯年収(厳密には夫60歳までの可処分所得のみ計上) | 1億5269万円 | 1億4748万円 | 1億6403万円 |
奨学金の返済負担 | なし | あり | あり |
生活費 | 質素 | 裕福 |
- その他の詳細データはこちらを参照
1. 現役で滑り止め大に進学→並の給料
ではまず、滑り止めで受けた大学に現役で進学した場合について、シミュレーションしてみます。このケースでは、普通のサラリーマンとなり、並の給料で働いたものとします。この場合、将来の家計はどうなるのでしょうか?
ストレートで22歳で就職すれば、教育費のピークとなる50代も何とか乗り越え、退職金を受け取る60歳までやりくりできそうです。
2. 浪人して志望大に進学→並の給料
では次に、浪人して志望大学に進学したケースについてシミュレーションしてみます。このケースでは、大学に入ることが目的になってしまい、社会に出てからの仕事のモチベーションは決して高いとは言えず、並の給料で過ごすものとします。また、1年分の奨学金は自分で返済するものとします。この場合、将来の家計はどうなるのでしょうか?
なんと、支出の増加に対して収入の増加が追いつかず、資金ショートしてしまいました。
3. 浪人して志望大に進学→高給取り
では最後に、将来就きたい職業のために高い志を持って浪人を決め、仕事に成功して高給取りになった場合について、シミュレーションしてみます。このケースでは、生活費の水準も、他のケースより高いものとします。この場合、将来の家計はどうなるのでしょうか?
おおっ、裕福な生活を送っても、何とか定年まで持ちそうですね。強い志を持って浪人するのであれば、モチベーションも高まり、結果として高い給料をもらえるという好循環の例です。
まとめ
浪人すべきか迷ったときの選択は複雑で、個々の状況に合わせて判断する必要があることと、判断ポイント3点について見てきました。
- ポイント1:予備校にかかる費用の負担
- ポイント2:生涯年収
- ポイント3:志の高さ
希望の大学に落ちてガッカリ・・・。中には周到に準備して勉強に励んできた結果、とても悔しい思いをすることもあるでしょう。来年こそ挽回したいという気持ちにもなりますが、上記のポイントを総合的に考慮し、将来のビジョンに基づいた意思決定を行うことが重要です。
とはいえ、若い受験生にとって、資金計画で重要となる生活費、教育費、働き方、投資、保険、節税など、全くピンとこないかもしれません。そんな場合、なりたい自分に対して、「何歳までにこの資格を取りたい!」「何歳までに貯金をいくらためたい!」と逆算しながら人生のロードマップと資金目標を立てていくことをお勧めます。その際、人生経験が豊富な親御さんやファイナンシャルプランナー(FP)というお金の専門家にのアドバイスを受けてはいかがでしょうか?