リバースモゲージ or リースバック? どっちも長生きリスク?

リバースモゲージ or リースバック? どっちも長生きリスク?

「みじめな老後はイヤ!ゆとりを持って安心して暮らしたかったのに、貯金もあまり無く、このままではカツカツの生活に・・・。」

そんな時、「住んでいる自宅を担保にお金を借します!返済は自分が亡くなった後に自宅を売却したお金ですればOK!」という、リバースモゲージの広告を目にしたらどうしますか?「おおっ、そんな手があったのか!」と目からウロコかもしれませんね。

でも、ちょっと待ってください。リバースモゲージには次のような注意点もあります。

  • 自宅の評価額により、借入の限度額がある。
  • 自宅の評価額の変化により、借入の限度額が減ることもこともある。
  • 固定資産税やその他維持費用、借入金利の負担が続く。

もし、借りたお金を使い切ってしまった後、予想以上に長生きして借入限度額を超えてしまったらお金に困りますよね。そんな想像をすると、やはり、限度のある借金には抵抗があるかもしれません。でも、今の家には住み続けたいのですぐに売る気はないし、どうしよう・・・?

とそこへ、「自宅を売った後も、賃貸で今の家に住めます!」というリースバックの広告が目に入ったらどうでしょう?「おおっ、これなら愛着のある今の家に住めるし、売ったお金で生活にもゆとりができ、願ったり叶ったり!」なのでしょうか?

この記事で分かること
リバースモゲージやリースバックを利用する場合のリスクと対応

具体的には次の方法でこれらを検証します。

  • 将来の金融資産残高の推移をシミュレーション
  • 金融資産残高をプラスに維持できるように自宅の活用方法や時期を調整

大事な自宅を有効に活用するために、将来の家計を見通し、適切な活用方法や時期を判断しましょう。



リバースモゲージやリースバックのリスクは?

これらの活用を考える場合、長生きするリスクを考慮する必要があります。

それは、予想以上に長生きした結果、手元に入手した以上のお金が必要になる可能性があるためです。

リバースモゲージやリースバックの動向

リバースモゲージはどれくらいの金融機関で取り扱われているのでしょうか?

「令和4年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」(国土交通省)を加工して作成した次の表によると、「現在、商品として取り扱っている」または「商品化を検討中」と回答した金融機関が、合わせて3割以上を占めています。

リバースモゲージの商品化状況回答数構成比
現在、商品として取り扱っている17316.8%
商品化を検討中17917.4%
商品化の予定はない65964.0%
商品化したいが、課題があってできない131.3%
取り扱っていたが、廃止した50.5%
「令和4年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」(国土交通省) (※)を加工して作成
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001597868.pdf

また、リースバックの取引はどれくらいあるのでしょうか?

「消費者向けリースバックガイドブック策定に係る検討会 第1回検討会(2021年12月13日)資料2」(国土交通省) を加工して作成した次の表によると、この調査の範囲では取引件数が大幅に増えている傾向がわかります。

リースバックにおける取引件数の推移
買取仲介
201625610
201734049
2018745175
「消費者向けリースバックガイドブック策定に係る検討会 第1回検討会(2021年12月13日)資料2」(国土交通省) (※)を加工して作成
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001487302.pdf

これらの統計からも、リバースモゲージやリースバックに対する関心は高まっているのではないでしょうか?

ただ、本当にこれらの活用により、老後のゆとりを持つことができ、一生安心の家計になるのかは見積もってみないと分かりません。この記事では、次のシナリオの設定条件で、将来の家計をシミュレーションしてみます。


シミュレーション
〜マイホームの活用方法により将来家計は?〜

シナリオの設定条件

  • 家族条件
家族条件歳(現在)生計から外れる
30100歳で死亡
27100歳で死亡
  • マイホームの活用条件
比較項目ケース1ケース2ケース3
マイホームの
活用方法
リバースモゲージリースバック長く住んだ後に売却
活用時点夫81歳夫81歳夫89歳
活用により得た収入600万円
(借入金)
700万円
(売却額)
1000万円
(売却額)
固定資産税・都市計画税夫75歳-妻100歳 (死亡まで所有継続)夫75歳-80歳 (売却後はかからず)夫75歳-89歳 (売却後はかからず)
介護施設
入居時一時金
00350万円
(夫90妻87歳各)
介護施設
年間固定費
120万円(夫妻各91-100歳)120万円(夫妻各91-100歳)100万円(夫90妻87-100歳各)
  • その他の詳細データはこちらを参照

1. リバースモゲージ

ではまず、夫81歳時点でリバースモゲージにより600万円(※)を借り入れた場合について、シミュレーションしてみます。
※借入限度額は、担保となる自宅の市場価格1000万円の6割と想定。

当初、平均寿命より長い90歳まで持てば十分と考え、ゆとりのある生活を送ってきました。しかし、予想以上に長生きできると、将来の家計はどうなるでしょうか?

1. リバースモゲージ

90歳まで持てば十分、ではありませんでしたね。リバースモゲージによる借入金を使い切ってしまい、90代で資金ショートしてしまいます。長生きはおめでたいのですが、経済面ではリスクとなってしまいました。

2. リースバック

では次に、夫81歳時点でリースバックを活用するケースについてシミュレーションしてみます。
このケースでは、自宅を売却して700万円(※)の現金を手に入れ、その後は夫婦それぞれ90歳まで、同じ家を賃貸することとします。
※リースバックの売却額は、担保となる自宅の市場価格1000万円の7割と想定。
リースバックでは、自宅の所有者ではなくなるため、それまでの固定資産税・都市計画税の負担が無くなるのは良いのですが、逆に、賃料が相場より高めにかかってしまうことがあります。今回のシナリオでは、70万円/年の賃料がかかるものとすると、売却で得た700万円を10年ほどで消費してしまうことになります。

この場合も、予想以上に長生きすると、将来の家計はどうなるでしょうか?

2. リースバック

ゆとりのある生活をし続ける一方で、リースバックによる売却で得たお金は10年間の賃料で使い切ってしまい、90代で資金ショートしてしまいますね。やはり長生きリスクには耐えられませんでした。

3. 長く住んだ後に売却

では最後に、長く自宅に住んだ後に売却したケースについてシミュレーションしてみます。

他のケースと同様に、80代をゆとりのある生活水準で過ごしつつ、80代半ばで「このままでは90歳まで資金寿命が持たない!」と気づき、自宅の売却先を探し始めました。その結果、夫89歳時点で納得できる通常の市場価格で売却し、1000万円の現金を得られたものとします。

また、自宅売却後、夫90歳、妻87歳で一緒に介護施設に入ることにしますが、ケース1やケース2とは違って入居時一時金の支払いがあり、終身で面倒を見てくれるタイプの介護施設に入居するものとします。

すると、将来の家計はどうなるでしょうか?

3. 長く住んだ後に売却

今回は、自宅の売却で得たお金を介護施設の入居時一時金に回すことができ、終身で面倒を見てもらえるので、一生安心して過ごせますね。

まとめ

「みじめな老後は嫌!」という思いでリバースモゲージやリースバックを活用しようと考える場合にも、注意があります。一時的に大きなお金が手元に入ると気が大きくなりがちですが、ゆとりを楽しんだ末、予想以上に長生きして資金ショートしてしまっては、人生の最後がみじめになってしまいますね。健康状態にもよりますが、人生100年時代と言われる中、長生きするリスクも考慮して将来の家計を見通し、自宅の活用方法や時期を判断することをお勧めします。

とはいえ、個人の価値観や健康状態、諸事情により、どうしても直近の数年間で大きなお金が必要となり、リバースモゲージやリースバックを活用せざるを得ないケースもあります。その場合、予想以上に長生きしてから慌てないように厳しく見積もり、対策を考えておくことをお勧めします。生活費、子への資金援助、投資、保険、節税、介護施設の選択など、様々な面での見直し方法がありますので、総合的に見直すと良いでしょう。

個人の価値観、収入、資産、家族構成、家庭事情などにより、優先度は異なりますので、ご自身のケースではどうなのか試算してみなければわかりません。ここでご紹介したようなシミュレーションをもとに対策を考えたい方は、ぜひFP(ファイナンシャルプランナー)というお金の専門家に相談してみることをお勧めします。きっとあなたが気づいていない課題についても掘り起こし、広い視点からアドバイスがもらえることでしょう。



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