転職で長残業やストレスから解放!収入ダウン後の生活は?

転職で長残業やストレスから解放!収入ダウン後の生活は?

安定的にたくさん稼いでいるサラリーマン、結婚して家庭を持ち、マイホームを建て、子どももでき・・・、絵に描いたような人生で羨ましい限りですね。でも、重責や理不尽なストレスに押しつぶされそうになりながら今日もまた長残業・・・。

体調不良やうつ、過労死などの問題も懸念されます。果たして本当に幸せなのでしょうか?収入は少しくらいダウンしても仕事の負担を減らしたく、「転職」という言葉が頭をよぎるかもしれませんね。

しかし、今の仕事のメリットは何と言っても安定したそれなりの給料。今の仕事を続ける限り今後の給料も大きなブレはなく、退職金や企業年金の見通しも立つ。生活費や住宅ローン返済、子供の教育費、老後資金など多くのものを背負っている状況で、それだけの大きなメリットを手放してよいのでしょうか?

終身雇用制が崩れてきているとはいえ、一旦安定の地位を逃すと、元の状況に戻るのは容易ではありません。後悔のないように転職の判断をしたいですね。

この記事で分かること
転職して収入ダウンした場合の
・家計への影響
・許容可能なダウン幅
・厳しい場合の対策のヒント

具体的には次の方法で分かります。

  • 将来の金融資産残高をシミュレーション
  • 金融資産残高をプラスに維持できるように収支を調整

統計から見る賃金格差

大企業や正社員・正職員は、やはり経済的に恵まれているのでしょうか?厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」をもとにした以下の統計によると、特に格差が顕著な50-54歳代の賃金水準は、大企業に対して小企業は約75%、正社員・正職員に対してそれ以外は約55%というように大きな格差があります。さらに、残業手当や賞与、福利厚生、退職金、企業年金など、実際の格差はもっと大きそうですね。(もちろん企業・職種・立場などにもより様々ですが、一般的な傾向としてです。)

企業規模間の賃金格差(男女計)
 大企業中企業小企業
年齢階級賃金 (千円)賃金 (千円)企業規模間
賃金格差
(大企業=100)
賃金 (千円)企業規模間
賃金格差
(大企業=100)
50-54歳421.4356.484.631574.8
`
出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」をもとに著者作成。
常用労働者 1,000人以上を「大企業」、100~999人を「中企業」、10~99人を「小企業」に区分。
雇用形態間の賃金格差 (男女計)
 正社員・正職員正社員・正職員以外
年齢階級賃金 (千円)賃金 (千円)雇用形態間
賃金格差
(正社員・正職員=100)
50-54歳388.421254.6
出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」をもとに著者作成

しかし、いくら経済的に恵まれている人でも、心身の健康を害したり、家庭やプライベートまで犠牲にしてしまっては元も子もありません。適度なワークライフバランスを求めたいところですが、収入ダウンはその後の生活にどう影響するのでしょうか?また、どの程度の収入ダウンは許容なのでしょうか?これまで経済的に恵まれてきたサラリーマンにはイメージしにくいかもしれません。そこで、次の例でシミュレーションしてみます。

シミュレーション

シナリオの設定条件

家族条件歳(現在)生計から外れる
40100歳で死亡
37100歳で死亡
第1子1023歳で独立
第2子723歳で独立

その他共通条件

  • 夫は60歳で定年退職後、それまでの半分の給料で65歳まで働く。
  • その他の詳細データはこちらを参照。

ケース1. 今の仕事を継続し収入維持

まず、転職せずに今の仕事を頑張り続けた場合はどうでしょうか?

ケース1. 今の仕事を継続し収入維持
  • 転職せず、今の収入を60歳まで維持。
    (給与手取り700万円)
  • 2人の子は私立の高校・大学に進学。
  • 生活費は第2子独立まで28万円/月。
  • その後、夫70歳まで25万円/月。
    ※上記の金額はすべて現在価値で表示。

高校以降は私立に通わせ、経済的にゆとりのある生活を送っても、一生安心して生活できそうですね。しかし、精神的・肉体的な負担や多忙ご続いてはバランスが取れていません。また、心身の不調から働けなくなってしまい、結果として安定を欠くことにもなりかねません。

ケース2. 収入半減なのに生活維持

では、思い切って収入が半減することも覚悟で転職してみると、どんな未来が待っているのでしょうか?もし生活水準や進学先などを見直さないと、大変な状況になります。

ケース2. 収入半減なのに生活維持
  • 半減した収入を60歳まで維持。
    (給与手取り350万円)
  • 2人の子は私立の高校・大学に進学。
  • 生活費は第2子独立まで28万円/月。
  • その後夫70歳まで25万円/月。
    ※上記の金額はすべて現在価値で表示。

子どもが大学に進学する頃から金融資産はマイナスに大きく転落、奨学金を数百万円受ける程度では焼け石に水ですね。退職金が入っても、あっという間にグラフからはみ出すほどのマイナスになってしまいます。

ケース3. 収入半減でかなり節約&公立

では、収入の半減に伴って生活水準を落とし、進路も見直してみましょう。

ケース3. 収入半減でかなり節約&公立
  • 半減した収入を60歳まで維持。
    (給与手取り350万円)
  • 2人の子は公立の高校・大学に進学。
  • 第2子独立までの生活費21万円/月。
    (ケース1, 2より7万円/月ダウン)
  • 70歳までの生活費は18万円/月
    (ケース1, 2より7万円/月ダウン)

進路は国公立に制限し、現役中も老後も慎ましく生活していく必要があります。収入を半減させるには家族みんなで相当な覚悟が必要ですね。

とはいえ、子どもの進路などの優先事項があり、そんな覚悟はできない場合、やはり収入の方を調節するしかありません。それが次のケース4です。

ケース4. 収入9割で多少節約&私立

家族の優先事項を実現できる範囲で、どこまで収入を落としてよいのか調節してみましょう。高校以降は私立の選択肢を残すことを優先事項と考え、家族も多少であれば生活水準を下げることにも協力できると、どうなるでしょうか?

ケース4. 収入9割で多少節約&私立
  • 収入を9割に落とし、60歳まで維持。
    (給与手取り630万円)
  • 2人の子は私立の高校・大学に進学
  • 生活費は第2子独立まで24万円/月
    (ケース1, 2より4万円/月ダウン)
  • その後70歳まで21万円/月
    (ケース1, 2より4万円/月ダウン)

このケースでは収入を9割まで落として大丈夫ということが分かりました。ただし、そもそもの転職の目的である、ワークライフバランスを達成するため、仕事の負荷も軽減されることが前提です。

果たしてそんな都合の良い転職先は見つかるでしょうか?冒頭の統計データからも分かるとおり、この水準(手取り630万円)の収入を得るには正社員・正職員でなければ厳しく、よほど高度のスキルか、ハードな働き方を求められる可能性があります。

もしくは、本業収入を半減(350万円)させ、副業などで副収入(280万円)を得ることで、合計630万円の水準を達成するというのはどうでしょうか?本業が楽になっても、副業でそれだけ稼ごうと思うと、やはり高度なスキルやハードワークが必要になりそうです。非常に悩ましいですね。

まとめ

安定的にたくさん稼いでいるサラリーマン、毎日仕事に忙殺され、心身のために転職を検討されている方もいるでしょう。しかし、家族の生活や進学費用、老後資金などプライベートでも重い責任を背負っており、収入ダウンは大きな影響を与えます。転職する際には家族で十分話し合い、優先事項を決め、家族でどのような協力が必要なのか覚悟しておくことが大事です。

とはいえ、個人の価値観や諸事情により、どうしても譲れない優先事項があり、収入ダウンは困る場合もあるでしょう。生活費、教育費、働き方、投資、保険、節税など、様々な面での見直し方法がありますので、総合的に見直すと良いでしょう。

個人の価値観、収入、資産、家族構成、家庭事情などにより、優先度は異なりますので、ご自身のケースではどうなのか試算してみなければわかりません。ここでご紹介したようなシミュレーションをもとに対策を考えたい方は、ぜひFP(ファイナンシャルプランナー)というお金の専門家に相談してみることをお勧めします。きっとあなたが気づいていない課題についても掘り起こし、広い視点からアドバイスがもらえることでしょう。

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