共働きなら買える物件?出産・育児による収入ダウンを想定要!
駅近の新築マンション!交通手段や商業施設にも事欠かず、あこがれますよね。「でも高いんでしょ?」と警戒しながらも、実際に住宅ローンの事前審査に通ったら、少し心が揺れ動くのではないでしょうか?
朝から晩までバリバリ働いている共働き夫婦なら駅近が条件となり、高くても夫婦で力を合わせて住宅ローンを返そうと考えるかもしれませんね。
しかし、間もなく妊娠も判明し、出産・育児のために収入が大幅にダウンすることになったらどうでしょうか?出産・育児に伴う各種手当や、社会保険料の免除などのある程度の優遇を受けたとしても、到底以前の収入には及びません。
以前の収入を前提に住宅ローンを借りていたら大変なことになりますね。余裕のつもりでいた貯蓄もあっという間に取り崩していくことになり、こんなことなら、もっとマイホームの予算を低く設定しておけばよかったと後悔しても後の祭りです。どうすればよいか途方に暮れてしまうでしょう。
共働きの夫婦が住宅ローンを組む場合、
・収入ダウンによる家計への影響
・購入後の対策の厳しさ
・適切な予算の考え方
具体的には次の方法で分かります。
- 将来の金融資産残高をシミュレーション
- 金融資産残高をプラスに維持できるように収支を調整
皆さんも出産・子育てに伴う収入ダウンを考慮し、適切な購入予算を立てましょう。
統計から見る返済額
総務省統計局の家計調査(家計収支編)の結果(2021年)をもとに作成した次の表によると、1世帯当たり1か月間の土地家屋借金返済額は、約8〜10万円/月です。
世帯主年齢階級 | 土地家屋借金返済額(円/月) |
-29歳 | 82,691 |
30歳-39歳 | 89,203 |
40歳-49歳 | 85,870 |
50歳-59歳 | 91,376 |
60歳-69歳 | 99,197 |
70歳- | 87,391 |
平均 | 88,998 |
出典:「家計調査(家計収支編)」(総務省統計局、2021年)の住宅ローン返済世帯のデータをもとに作成 |
今の家賃と比べてどうでしょうか?共働きでまだ子どものいない若い夫婦なら、「えっ、もっと返せるんじゃないの?うちは2馬力だし。」と感じるかもしれませんね。実際、若い夫婦が都会のタワマンを勢いで買ったという話を聞いたことがないでしょうか?
では、次の例を想定して検証してみます。
シミュレーション
前提
家族条件 | 歳(現在) | 生計から外れる |
夫 | 30 | 100歳で死亡 |
妻 | 27 | 100歳で死亡 |
第1子 | 0 | 23歳で独立 |
第2子 | 3年後に誕生 | 23歳で独立 |
- 住宅ローンの事前審査では「夫婦2馬力で5000万円は借りれる!」という結果。
- 住宅購入の契約後に妊娠が判明。
- その他の詳細データはこちらを参照。
1. 収入ダウンしなければ
「5000万円の住宅ローンも借りれる!」と聞いて胸を躍らせ、希望通りの駅近物件を手に入れたものとします。この場合、収入がダウンしなければ、金融資産残高をプラスに維持することができる見通しです。
やはり「本当の2馬力」はパワフルですね。まさにパワーカップルと言えるでしょう。
2. 収入ダウンすると
しかし、本当に2馬力と考えてよかったのでしょうか?購入契約後、第1子の妊娠が判明し、出産・子育てをすることになったとします。今までのようには仕事を続けられず、実際には出産育児一時金、出産手当金、育児休業給付金、社会保険料の支払い免除等の優遇を受けても、以前のような収入には到底及ばないでしょう。
さらに3年後にはめでたく第2子が生まれたものの、核家族での乳幼児の子育ては24時間体制でとにかく大変!「育児と仕事の両立はもうギブアップ!」となり、妻が退職せざるを得なくなるかもしれません。そうなると、家計の面ではもう火だるまですね。
貯金をどんどん取り崩していき、このままでは破綻あるのみです。ようやく第2子が小学校に上がるときに、妻が再就職をしたとしても、元のようには稼げません。小学生とはいえ育児のため時短勤務をしたり、パートや派遣といった働き方では、稼げる額にも限度があります。
ちなみに、この例で妻が27歳〜60歳までの総収入は、ケース1の場合約1億4000万円、ケース2では約6000万円となり、約8000万円も減ってしまいます。
これだけ大きな収入ダウンですから家計への影響は甚大です。マイホーム購入予算を考える際には絶対に考慮が必要ですね。
3. 対策しても見えない将来
では、すでに購入を契約してしまったケース2の状況において、どのような対策を取れるでしょうか?ここでは次のようにあの手この手で対策を打ってみます。
- マンションを手放し、賃貸に回帰
- マンションを36歳で売却。
- それでも借入が500万円残り赤字計上。
- 子どもの部屋が一番欲しい時期に
二人用の狭い賃貸での生活も余儀なし。
- 生活費の削減
- 生涯約2〜4万円/月削減
- 子どもの進路の制限
- 高校、大学は国公立に制限
- 大学では各240万円の奨学金
(各子どもが負債を背負う。)
- 介護費用の削減
- 90代で約2万円/月削減
すると、次のような結果になります。
これだけ人生を通して家族でしのぎを削ったにも関わらず、何とも心もとない将来ですね。
4. 借入額を抑制
では、そもそも借入額をどれだけ抑制すれば良かったのでしょうか?ここでは、ケース1に対して以下の対策を打った場合でシミュレーションしてみます。
- 住宅ローン借入額を2500万円に削減
- 親の援助500万円と合わせて
購入予算を3000万円に抑制。
- 親の援助500万円と合わせて
- 生活費の削減
- 生涯約2〜4万円/月削減
- 子どもの進路の制限
- 高校、大学は国公立に制限
- 大学では各240万円の奨学金
(各子どもが負債を背負う。)
すると次のようになります。
ケース3よりは住居や介護にゆとりを持てますが、生活レベルや子どもの進路については制限がかかります。マイホームの予算を決めるときは、他のことへの影響の覚悟も必要でしたね。
まとめ
「後悔先に立たず!」とはよく言ったものです。マイホームは多くの人にとって人生最大の買い物ですので、予算に大きな考慮漏れがあっては大変なことになりますね。特に若い夫婦は、今後の家族構成やライフイベント、ワークスタイルなど未定のことが多く、また、子育てなど未経験の現実もイメージしにくいかもしれません。様々な可能性を考慮して慎重に考えることをお勧めします。
とはいえ、マイホーム購入は多くの夫婦にとって初めての経験で、物件を選ぶ際にどのように予算を立ててよいのかと悩んでしまいますよね。個人の価値観や諸事情により、どうしてもマイホームを優先せざるを得ないケースもあります。その場合、将来の家計を厳しく見積もり、対策を考えておくことをお勧めします。生活費、教育費、働き方、投資、保険、節税など、様々な面での見直し方法がありますので、総合的に見直すと良いでしょう。