一人っ子ならと私立小学校に!年収ダウンで公立への転校を避けるには?
「ウチは一人っ子だし、集中投資して、できるだけ良い教育環境を与えたい!」特に、年収がそれなりに高いご家庭では、幼児期から英才教育し、私立の小学校へ進学させることもお考えかもしれません。その場合、その後も私立の中高一貫校、大学もやはり私立、となりやすいですね。とすると、一人っ子でも教育費の総額は◯千万円!
よほどの資産家でもない限り、大学卒業までの約20年間、安定して高収入を得られることが大前提になりそうです。
高年収のご家庭によくありがちですが、夫は毎日朝から晩まで多忙を極め、下手すると週末も返上して仕事、仕事、仕事!たまの休みはグッタリ・・・。すると妻は、フルタイムで働くこともできず、短時間勤務もしくは専業主婦で子育てに専念せざるを得ないというパターンです。
たとえ今は高年収でも家計の柱が一本だけというのは何とも心もとないですね。「こんな状況で夫に何かあったら、この子の進学費用や将来の家計はどうなるのだろう?」と不安になることでしょう。考えたくないですが、もしそんなことになったら、ようやく馴染んできた私立小学校から公立小学校へ転校させざるを得ないということもあり得ます。親子ともに受け入れがたくても、背に腹は変えられませんね。
では、そのようなリスクに、どう備えればよいのでしょうか?
年収ダウンにより、私立小学校から公立小学校へ転校となるリスクへの備え方
一人っ子ならと早期から目一杯、教育費をかけるご家庭もありますが、年収ダウンによる転校リスクには十分に備えましょう。
年収ダウンで公立への転校を避けるには?
次のどちらかの方針で対策することをお勧めします。
- 初めから公立小学校に進学させる。
- 私立小学校に進学させる。ただし、いざ収入ダウンした場合に備えて他の収入源を確保する。
たとえ今は高収入でも、家計の柱が一本だけという場合は特にリスクが高いため、これらの対策の必要性も高まります。
私立小学校は高年収が前提?
私立小学校に通わせる世帯の年収はどれくらいなのでしょうか?「令和3年度 子供の学習費調査」(文部科学省) を加工して作成した次の表によると、約8割が800万円以上、約5割が1200万円以上であることが分かります。
私立小学校に通わせる世帯 | |
世帯の年間収入段階 | 構成比(%) |
400万円未満 | 4.8 |
400万円~599万円 | 6.5 |
600万円~799万円 | 9.4 |
800万円~999万円 | 13.3 |
1000万円~1199万円 | 14.2 |
1200万円以上 | 51.8 |
合計 | 100.0 |
「令和3年度 子供の学習費調査」(文部科学省) (※)を加工して作成 ※ https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa03/gakushuuhi/1268091.htm 「統計表一覧」→「5 世帯の年間収入段階別,項目別経費の構成比」 |
やはり、私立小学校に通わせるには、よほどの資産家でもない限り、ある程度の高年収であることが前提になりそうですね。
問題は、その高年収を将来に渡って維持できるかどうかです。もし怪我や病気、リストラなどで大幅に収入ダウンしたら、その後の進学や家計にどのような影響があるのでしょうか?
この記事では、次のシナリオの設定条件でシミュレーションしてみます。
シミュレーション
〜年収ダウンでどうなる?〜
シナリオの設定条件
- 家族条件
家族条件 | 歳(現在) | 生計から外れる |
夫 | 30 | 100歳で死亡 |
妻 | 27 | 100歳で死亡 |
子 | 3年後に誕生 | 23歳で独立 |
- 収入、支出の条件
次の3つのケースを想定します。
比較項目 | ケース1 | ケース2 | ケース3 |
就労 | 今の仕事を継続 | うつ病で休職後、転職 | |
夫収入 | 高年収維持 | 休職中は健康保険給付あり。転職後は年収ダウン。 | |
夫退職金 | 多 (定年時) | 少 (中途退職時) | |
夫年金 | 多 | 並 | 並 |
妻給与 | なし(専業主婦) | 働き始めてから多少 | |
妻年金 | 少 | 並 | 並 |
教育費 | 小学校〜大学までオール私立。大学は私立(自宅外)。 | 私立小→公立小に転校後、大学まで国公立(自宅)。 |
- その他の詳細データはこちらを参照。
1. 高収入を維持
ではまず、バリバリ働き続ける夫が最後まで健康に恵まれ、リストラにも合わず、無事に高収入を維持できた場合についてシミュレーションしてみます。この場合、将来の家計はどうなるでしょうか?
さすが高収入!大学まで私立に通わせ続け、生活にもゆとりを持って過ごすことができました。ただ、妻が専業主婦のため、夫が病気や怪我、リストラにあってしまわないかなどと考えると恐ろしく、まさに綱渡り状態ですね。
2. 収入ダウン→家計破綻
では次に、子どもが私立小学校に入学した翌年、夫がうつ病になって収入ダウンしたケースについてシミュレーションしてみます。当面の1年半の休職中は健康保険の傷病手当金を受け取りながら療養し、その後は社会復帰に成功。ただし、うつの再発を避けるため、元の職場には復帰せず、収入を落として転職することとします。
一方、専業主婦だった妻も、生活をかけて背水の陣で働き始めたものとします。
この場合、将来の家計はどうなるのでしょうか?
そんな妻の努力も焼け石に水、大学まで私立に通わせた結果、大幅に資金ショートしてしまいます。やはり、夫の高収入の柱が一本だけというのは、収入ダウンのリスクが大き過ぎますね。
3. 収入ダウン→公立転校
では次に、ケース2と同様に収入ダウン後、背に腹は変えられず、公立の小学校に転校、中学校〜大学も国公立・自宅通学に制限したケースについてシミュレーションしてみます。この場合、将来の家計はどうなるでしょうか?
何とか一生の間、家計を維持することができたものの、子どもを無理やり公立の小学校に転校させた挙句、その後の進路まで制限するのはつらいことです。こんなことなら、初めから公立の小学校に入学させればよかったと後悔するかもしれませんね。
4. うつ病が長期化していたら?
ケース3では収入ダウンしながらも、夫がすぐ1年半後に社会復帰できたからまだ家計を維持できましたが、もしこれが5、10年・・・などと長期化していたら、もっと大変なことになりますね。
うつ病で障害認定され、条件を満たせば、障害基礎年金、障害厚生年金によりある程度の収入を得られるケースもありますが、元々の計画のオール私立コースはさすがに厳しく、進路も見直さざるを得ません。
では、保険では備えられないのでしょうか?生命保険に加入しても、高度障害にも該当せずに生きている状況では、保険金が支払われません。一方、就業不能保険であれば、うつ病でも保険金が支払われるタイプのものもありますが、保証期間が数年間など限られていることもあります。そのため、オール私立の備えにはならなくても、せめて在学中の転校を回避するための備えとしては、検討しても良いのではないでしょうか?
まとめ
一人っ子の場合、愛情もお金も一人に集中し、幼児期の英才教育や、私立小学校への進学など、多額の教育費をかけるご家庭もあります。しかし、高収入の柱が夫婦のどちらか一本だけの場合、稼ぎ手が怪我や病気になったり、リストラにあったりすることで、一気に収入ダウンするリスクと隣合わせですね。
小学校から私立に通わせると、このままオール私立しか考えられなくなり、方向転換が難しくなることがあります。そのため、収入がダウンした場合のリスクも考慮して、本当に小学校から私立に進学させるのが良いのか慎重に判断することをお勧めします。また、いざ収入ダウンした場合に、在学中に公立への転校を避けるため、就労不能保険の活用なども検討してみてはいかがでしょうか?
とはいえ、個人の価値観や諸事情により、どうしても私立小学校への進学を優先せざるを得ないケースもあります。その場合、収入ダウンしても慌てないように厳しく見積もり、対策を考えておくことをお勧めします。生活費、教育費、働き方、投資、保険、節税など、様々な面での見直し方法がありますので、総合的に見直すと良いでしょう。