高すぎる老人ホーム!自立している時から長期で入所するには?

高すぎる老人ホーム!自立している時から長期で入所するには?

「おっとっと!」長年住み慣れた自宅なのに、段差で転んでしまった・・・。もし打ちどころが悪く、周りに助けを呼べる人がいなかったらと思うとヒヤッとしますよね。まだ自立して生活していても、そんなことがあると、早いうちから施設で安心して暮らしたいと考えるかもしれません。

しかし、人間は最期までついてくるのが資金の問題です。人生100年時代、こんなに早くから施設に入って、ずっと支払い続けられるのだろうか?と不安を感じることでしょう。

比較的費用負担の少ない公的な特別養護老人ホーム(特養)は、そもそも自立したときから入れませんし、要介護度が進んでも、空きが出るまで長く待たされることもあります。かといって、自立〜最期までずっと面倒を見てくれる有料老人ホーム(混合型)はとにかく高そうだし・・・。一体どうすればよいのでしょうか?

この記事はこんな人におすすめ
・自立や要支援など、早い段階から施設に入りたい人
・長期での高額な費用負担が心配な人

この記事では、将来の金融資産残高の推移をシミュレーションにより検証します。

介護施設の費用は公的or私的、サービス内容、入居期間、立地などにもより千差万別ですが、将来の家計を見通し、適切に選択しましょう。

自立している時から長期で入所するには?

最期まで支払い続けられる資金計画のもと、自立→要支援→要介護と進んでいく各段階で施設を見直し、移住を検討することをお勧めします。

様々な要支援・要介護レベルに対応できる老人ホームは、種類や費用面でも選択肢が限られてしまうからです。

人気の特別養護老人ホーム!待機状況は?

特別養護老人ホーム(特養)は公的な施設で、費用負担が比較的少ないこともあり大変人気ですね。入居を申請しても、空きが出るまで待機が必要になることがあります。

厚生労働省の「特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和4年度)」を元に作成した次の表によると、入所を申し込み中にも関わらず未入所の方は全体で27.5万人にも及びます。

分類要介護度申込中だが未入所
万人%
特例要介護10.82.8
要介護21.55.3
基本要介護310.538.0
要介護49.233.5
要介護55.620.3
合計27.5100.0
「特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和4年度)」(厚生労働省)(※)をもとに作成
https://www.mhlw.go.jp/content/12304250/001029178.pdf

また、特別養護老人ホームに入れるのは基本的に要介護3以上ですが、要介護4、5で未入所の方もそれなりにいます。要介護3に達したからと言って、必ずしもすぐに入所できるとは限らないのですね。

では、自立しているときから最期まで施設で過ごしたい場合、どうすればよいのでしょうか?また、ずっと支払い続けられるのでしょうか?

施設の種類や施設間の移住により、家計への影響がどのように異なるのか、次のシナリオの例でシミュレーションしてみましょう。

シミュレーション
〜介護施設の種類により貯金残高が…移住すると?〜

シナリオの設定条件

  • 家族条件
家族条件歳(現在)生計から外れる
56100歳で死亡
53100歳で死亡
  • 子どもは既に独立し、生計外。
  • 夫婦は3歳差があり、それぞれ75歳(まだ自立)から何らかの施設に入居し、100歳まで過ごす。
  • 施設の条件(種類、費用、移住など)は、以下のケースごとの表を参照。(夫婦ともに同条件とし、いずれも夫56歳時点の物価水準で表示。)
  • その他の詳細データはこちらを参照。

1. ずっと有料老人ホーム(混合型)

ではまず、76歳で自立しているうちからずっと有料老人ホーム(混合型)で過ごす場合についてシミュレーションしてみます。長期での入居を見越し、入居一時金(家賃月額9万円×12ヶ月×15年想定 = 1620万円)を支払って入居します。

有料老人ホーム(混合型)
費目万円年齢変動率(%)
入居一時金162076歳1
月額(家賃除く)1176-100歳1

その場合、将来の金融資産の状況はどうなるでしょうか?

1. ずっと有料老人ホーム(介護付)

3歳離れた夫婦がそれぞれ76歳で入居一時金を払いますが、後を追う妻の入居前(夫78歳時点)に自宅を売却したものの、十分な収入を得ることができませんでした。また、その後も夫婦二人分の月払い費用や生活雑費も含めると、金融資産のマイナスは拡大していく一方ですね。このシナリオの条件では、ずっと有料老人ホーム(混合型)というのは無茶な話でした。

2. サ高住(一般型)→有料老人ホーム(介護付)

では次に、自立〜要介護度の低いうちはサービス付き高齢者向け住宅(一般型)に入居し、途中で有料老人ホーム(介護付)に移住するケースについてシミュレーションしてみます。

サ高住(一般型)は住宅+αのサービス(安否確認、生活相談等)で、当初の費用は有料老人ホームなどと比べると、比較的安い傾向があります。しかし、サ高住(一般型)には介護サービスは付いていないため、必要に応じて外部サービスを追加契約して利用することになり、施設により要介護度が高くなると、退去を求められることもあります。

このケースでは、87歳までサ高住で暮らし、88歳で有料老人ホーム(介護付)に移住することを想定します。

サービス付き高齢者向け住宅(一般型)
費目万円年齢変動率(%)
敷金2076歳1
月額(家賃、他)1276-87歳1
有料老人ホーム(介護付)
費目万円年齢変動率(%)
入居一時金088歳1
月額(家賃含む)2088-100歳1

また、有料老人ホーム(介護付)の家賃相当を、月払いすることにします。(家賃9万円+その他月額11万円=合計月額20万円)

この場合、将来の金融資産残高はどうなるでしょうか?

2. サ高住(一般型)→有料老人ホーム(介護付)

当初は比較的費用負担の少ないサ高住(一般型)で過ごしたため、金融資産に余裕がありました。しかし、有料老人ホーム(介護型)に移住してからは、金融資産残高の減り方が急激になり、90代後半で資金ショートしてしまいますね。人生100年とすると、このケースも困ってしまいます。

3. サ高住(一般型)→有料老(介護型)→特養

では、ケース2と同様にサ高住(一般型)→有料老人ホーム(介護型)に移住した後、さらに特別養護老人ホーム(特養)に移住するケースについて、シミュレーションしてみます。

費用負担の重い有料老人ホームの入居期間を最低限に抑えられるよう、要介護3になり次第、特別養護老人ホーム(特養)に入居を申請しておき、空きが出たら移住します。

このシナリオでは次のように条件を設定します。

サービス付き高齢者向け住宅(一般型)
費目万円年齢変動率(%)
敷金2076歳1
月額(家賃、他)1276-87歳1
有料老人ホーム(介護付)
費目万円年齢変動率(%)
入居一時金088歳1
月額(家賃含む)2088-90歳1
特別養護老人ホーム
費目万円年齢変動率(%)
入居一時金091歳1
月額1291-100歳1

この場合、将来の金融資産はどうなるでしょうか?

3. サ高住(一般型)→有料老(介護型)→特養

特養に移住できたおかげで、100歳まで金融資産を維持できそうですね。

まとめ

普段の生活は自立しているつもりでも、ちょっとした事故などから不安を感じ、早めの施設入居を考えることもあるでしょう。その場合でも、最期まで支払い続けられるように慎重に資金計画をすることは重要なことです。食事や家事代行、レクリエーション、手厚い介護、看取りなど、施設に期待することはたくさんあると思いますが、長期間に渡って思い通りにサービスを受けることは、資金面で困難かもしれません。優先度をつけて取捨選択するとともに、この記事のシナリオのように、施設間を移住することも選択肢として検討してみてはいかがでしょうか?

とはいえ、高齢者にとっては環境の変化による負担も大きく、その点の考慮も必要ですね。本当に早期から施設に入居するのが良いのか、当面は訪問介護・通所介護などの方法を取れないのか、自宅などの資産を活用して施設の費用を捻出できないかなど、様々な面で見直すと良いでしょう。

個人の価値観、収入、資産、家族構成、家庭事情などにより、優先度は異なりますので、ご自身のケースではどうなのか試算してみなければわかりません。ここでご紹介したようなシミュレーションをもとに対策を考えたい方は、ぜひFP(ファイナンシャルプランナー)というお金の専門家に相談してみることをお勧めします。きっとあなたが気づいていない課題についても掘り起こし、広い視点からアドバイスがもらえることでしょう。

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