実家売却で寂しいならリフォームして子世帯に!費用と贈与税の注意点
「実家の売却だなんてそんな寂しいこと…。」家族の思い出の場所を見知らぬ人に乗っ取られるようでつらいものです。
そんな場合、実家の所有者である親は、リフォームして子世帯が長く住めるようにしようと考えるかもしれませんね。しかし、親自身の老後資金も残す必要があるので、リフォームに500万円もかけるのは痛いな・・・。
一方の子世帯は、これから何十年も住む場所になるなら、大掛かりなスケルトンリフォームでリノベーションしたい!そこで親に提案です。
「自分たちで1000万円出すからいいよ。相続の時に名義変更すればいいんだからさ。」
すると親も渡りに船で乗ってくるかもしれませんね。果たして、本当に親に負担をかけずに済むのでしょうか?
・リフォーム費用を親が出す場合の老後資金への影響。
・リフォーム費用を子が出す場合の贈与税(親負担)の落とし穴。
・親から子への売却(譲渡)のメリット
実家のリフォーム費用を誰が負担するとよい?
実家のリフォーム費用は、親から子への売却(譲渡)をした上で、子が負担することをおすすめします。それは次の理由からです。
- 親は売却による収入を得て、老後資金の足しにできるため。
- 子が適正価格で買い取った実家を子自身がリフォームするのであれば、贈与税がかからないため。
こうすれば、親の老後資金の不安も解消されることでしょう。
リフォームの現状は?(高齢者と他年代の世帯)
高齢者と他年代がいる世帯のリフォームの現状について見てみましょう。
「令和4年度 住宅市場動向調査報告書」(国土交通省) からの次の引用をもとに計算すると、リフォーム実施世帯のうち、高齢者と他年代がいる世帯は52.7% x (100% - 47.5%) = 約27.7%です。
(…略…)
出典:「令和4年度 住宅市場動向調査報告書」(国土交通省)(https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001610299.pdf、2023年12月28日アクセス)
リフォーム実施世帯のうち、高齢者のいる世帯の割合は 52.7%。
(…略…)
リフォーム実施世帯の高齢者がいる世帯のうち、高齢者のみの割合は 47.5%。
(…略…)
高齢者と他年代のいる世帯では、誰がリフォーム費用を負担するのか、贈与税も考慮して決めることをおすすめします。
贈与税はどうかかる?
親名義の実家のリフォーム費用を子が負担した場合、子から親への贈与とみなされ、贈与税がかかることがあります。その場合の贈与税額の計算例を挙げます。
(例)親名義の実家のリフォーム費用1000万円を子が負担した場合 ・基礎控除後の課税価格 1000万円 - 110万円 = 890万円 ・贈与税額の計算(一般税率) 890万円 × 40% - 125万円 = 231万円
では、リフォーム費用や贈与税の負担が親にかかった場合、家計にはどのような影響があるのでしょうか?この記事では、次のシナリオの設定条件でシミュレーションしてみます。
シミュレーション
〜リフォーム費用や贈与税により家計は?〜
シナリオの設定条件
- 家族条件
家族条件 | 歳(現在) | 生計から外れる |
夫 | 69 | 100歳で死亡 |
妻 | 66 | 100歳で死亡 |
子は既に独立し、別生計とする。
親(夫)が所有する実家を子にどう引き継ぐかで場合分けする。
- 比較条件
比較条件 | ケース1 | ケース2 | ケース3 |
リフォーム費用 | 500万円 | 1000万円 | 1000万円 |
リフォーム費用の負担者 | 親(夫) | 子 | 子 |
リフォーム時の名義 | 親(夫) | 親(夫) | 子 |
子から親への贈与にかかる贈与税(親負担) | 非該当 | 231万円 | 非該当 |
親から子への家屋売却による親の収入 (譲渡費用や譲渡所得税を支払後の手取り) | 非該当 | 非該当 | 200万円 |
- その他の詳細データはこちらを参照。
1. 親名義のまま親負担でリフォーム500万円
ではまず、親名義のまま親負担でリフォームをした場合についてシミュレーションしてみます。親は「この家を守ってくれるなら、500万円くらいは出してやろう!」と勢いづいたものの、将来の家計はその負担に耐えられるのでしょうか?
なんと、90代で介護費用が残っておらず、資金ショートしてしまいました。しかも親の厚意も虚しく、500万円程度では子世代が満足するリフォームにならなかったら後悔しますね。
2. 親名義のまま子負担でリフォーム1000万円
では次に、親名義のまま子負担でリフォームをした場合についてシミュレーションしてみます。子は今後長く住むならと、大掛かりなスケルトンリフォームでリノベーションしたいと考えたのです。「自分たちで1000万円出すからいいよ。相続の時に名義変更すればいいんだからさ。」との子の提案に安易に乗った場合、親の将来の家計はどうなるでしょうか?
ありゃ?ケース1よりはマシですが、それでも90代の介護費用が不足しそうですね。このケースでは子から親への贈与とみなされ、231万円もの贈与税がかかってしまったのが痛いです。また、家屋の所有者は親のままであるため、親に固定資産税、都市計画税もかかり続けることになりました。
3. 子に譲渡して子負担でリフォーム1000万円
では最後に、親が家屋を子に譲渡して、子負担でリフォームをした場合についてシミュレーションしてみます。このケースでは、子への売却により収入(譲渡費用や譲渡所得税を支払後の手取り)が入るのです。この場合、将来の家計はどうなるのでしょうか?
おおっ、これなら介護費用も何とか賄うことができ、一生安心して暮らしていけそうですね。
一方の子には、リフォーム費用1000万円に加え、親からの家屋の買い取り費用がかかります。しかし、将来は土地を相続できるなら、土地費用が不要となるメリットは大きいですね。
これで親子でWin-Winの関係が成り立ちました。
まとめ
実家を知らない人に売却するのは寂しい!親子ともにそんな思いから、実家を子どもに引き継ぐ前提でリフォームする場合は、子どもに売却後に、子ども負担でリフォームすることをおすすめします。なぜなら、親は売却による収入を得ることができるだけでなく、贈与税の負担を回避できることで、老後資金の安定につながるためです。この記事では、これらのことをシミュレーションにより検証しました。
とはいえ、個人の価値観や諸事情により、どうしても親がリフォーム費用を負担したい場合や、子どもが負担できないケースもあります。いずれにしても、親や子の将来の家計を維持できなくなってから慌てないように厳しく見積もり、対策を考えておくことをお勧めします。生活費、教育費、働き方、投資、保険、節税など、様々な面での見直し方法がありますので、総合的に見直すと良いでしょう。