住宅ローン借り換える?10年固定期間の終了後ではなく途中で?
「とりあえず10年間は低金利のままで安心だ!」と思って選んだ、固定期間選択型(10年固定)の住宅ローン。しかし、あと数年で当初の固定期間の終了が見えてきて、「終了後はどうなるんだっけ?」と不安になる方もいるでしょう。「変動金利型に自動的に切り替わる」と聞いていたような…。と、記憶が曖昧なままでは、後々大変なことになるかもしれません。
実際に住宅ローンの契約時の説明資料を見直してみると、金利については「当初期間優遇」の文字が!
「えーっ?これって、10年経ったら適用金利が上がるってこと?」と冷や汗が出るかもしれません。「変動になれば、もっと低金利で借りられると思っていたのに・・・。」
こんなことに気づいたらショックですよね。昨今の金融情勢や日銀の動きもあり、もし急に金利が上がったらと不安が募ります。そんな時に考えるべきは、固定期間終了後ではなく途中での借り換えのタイミングです。
今の金利が少しでも低いうちに途中で借り換えをするべきか、あるいは固定期間終了後に他の金融機関に借り換えるべきか?どちらにしても、最適な借り換えのタイミングを見極めることが重要です。住宅ローンの返済計画をしっかりと見直し、適用金利の変動に備えましょう。
・固定金利選択型(10年固定など)の固定期間終了後の金利負担が不安な人。
・借り換えるべきか、借り換える場合はいつがベストなタイミングなのか迷っている人。
固定期間選択型から借り換えるべき?
固定期間終了後の優遇金利が減る場合、別の金融機関に借り換えることも選択肢として検討することをお勧めします。
もちろん借り換えのための諸費用はかかりますが、借り換えにより、改めて大幅な優遇金利のメリットを受けられることがあるからです。
ベストな借り換えタイミングは?固定期間終了後とは限らない?
次の場合には、固定期間の途中での借り換えも選択肢として検討しましょう。
- 今後も固定金利または固定金利選択型で安定したい場合。
- 今後も10〜20年など、長期で返済が続く場合。
- 期間終了後に、今よりも固定金利が上昇しているリスクを避けたい場合。
もちろん、固定期間が終了するまでは今の低金利のメリットを享受したほうが良いケースもあります。しかし、今後も長期で安定を重視するのであれば、少しでも低金利で固定したほうが、将来の金利負担総額を抑えられる可能性があるからです。
借り換えタイミングの注意点
今の契約の固定期間終了後に、変動金利が上がってきてから、固定金利に切り替えようと考えるかもしれません。しかし、一般的に、変動金利は固定金利の後に上昇します。そのため、固定しようと思ったときには既に遅し、ということもあり得ます。かと言って逆に、慌てて固定して高値づかみ、ということも避けたいですね。
住宅ローンの借り換えを検討する際には、金利の動向を注視する必要があります。
どの金利タイプが人気?
住宅ローンの人気の金利タイプはどれなのでしょうか?
「令和4年度 民間住宅ローンの実態に関する調査」(国土交通省) を加工して作成した次の表によると、新規貸出額は金利の低い変動金利型が7割以上を占めます。
一方で、安定はしていても金利が高い全期間固定金利型はかなりの少数派ですね。
新規貸出額における金利タイプ別割合 | |||
金利タイプ | 令和2年度 | 令和3年度 | 対前年度 |
変動金利型 | 70.0% | 76.2% | 増 |
固定金利期間選択型 | 16.6% | 13.5% | 減 |
全期間固定金利型 | 3.0% | 3.4% | 増 |
証券化ローン | 10.3% | 6.8% | 減 |
「令和4年度 民間住宅ローンの実態に関する調査」(国土交通省) (※)を加工して作成 |
※https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_fr1_000014.html
固定期間選択型は、新規貸出額の割合が令和2年度→3年度にかけて減少しています。その金利が上昇してきた場合、皆さんなら次のどちらを選択しますか?
- もっと金利が低い変動金利型を選択。
- 今のうちに安定的な全期間固定金利型を選択。
どちらが正解なのかは個々のケースによりますが、この記事では、固定期間終了時点でまだ20年近くも返済期間が残っていることを想定し、次のシナリオの設定条件で将来の家計をシミュレーションしてみます。
シミュレーション
〜金利タイプや借り換えにより将来の家計はどうなる?〜
シナリオの設定条件
- 家族条件
家族条件 | 歳(現在) | 生計から外れる |
夫 | 40 | 100歳で死亡 |
妻 | 37 | 100歳で死亡 |
第1子 | 10 | 23歳で独立 |
第2子 | 7 | 23歳で独立 |
- 比較条件
比較条件 | ケース1 | ケース2 | ケース3 |
金融機関 | 固定期間終了後も同じ金融機関から借り続け | 固定期間の途中で借り換え | |
変更後の金利タイプ | 変動金利型 | 全期間固定金利型 | 全期間固定金利型 |
借入金利の変化 | 0.6%→1.7% | 0.6%→3.2% | 0.6%→1.6% |
金利優遇幅の変化 | 縮小 | 縮小 | 同程度 |
- その他の詳細データはこちらを参照
1. 固定期間終了後に変動金利型
ではまず、固定期間終了後に同じ金融機関からの借り入れを継続し、変動金利型を選択したケースについて、シミュレーションしてみます。
この場合、優遇される金利の幅が小さくなりますので、実際の借入金利は0.6%→1.7%と1.1%も増えてしまうものとします。すると、将来の家計はどうなるのでしょうか?
この場合は、なんとか将来の家計を維持できそうですね。
ただし、変動金利が20年後まで上昇しないと楽観的に考えた場合であり、上昇するかもしれないという不安と常に隣り合わせになります。
2. 固定期間終了後に全期間固定金利型
ケース1のように不安を抱え続けるのは嫌だということで、次に、固定期間終了後に同じ金融機関からの借り入れを継続し、全期間固定金利型を選択したケースについて、シミュレーションしてみます。
この場合、優遇される金利の幅が小さくなってしまうのに加えて、長期金利が既に上がってしまっており、実際の適用金利は0.6%→3.2%と2.6%も増えてしまうものとします。この場合、将来の家計はどうなるのでしょうか?
金利負担が増えた分、老後の生活にもしわ寄せが来そうです。当初の固定期間終了時点で固定金利を選んでいては遅かったですね。もっと早く手を打っておけばよかったと後悔することでしょう。
3. 途中で借り換えて全期間固定金利型
では最後に、当初の固定期間の途中で別の金融機関に借り換え、全期間固定金利型を選択したケースについて、シミュレーションしてみます。
この場合、将来的に長期金利が上昇すると考え、当初の固定期間が終わるのを待たずに手を打つのです。
新しい借り換え先の金融機関では、また新たに優遇金利のメリットを受けることができ、実際の借入金利は0.6%→1.6%と1.0%の上昇で済んだものとします。(ただし、借り換えのために一時的に諸費用50万円を負担あり。)
この場合、将来の家計はどうなるのでしょうか?
老後も少し心もとないですが、なんとか家計を維持できそうですね。しかも今回は適用金利が上昇する心配はなく、計画的なやりくりで将来の家計を見通しやすくなります。何より安心感を得られたのは、精神的にも大きな収穫ではないでしょうか?
まとめ
当面は安心だと思っていた10年固定の住宅ローンの出口戦略は重要です。
特に、固定期間終了後に金利が上昇している可能性が十分考えられ、まだまだ長期で返済が続く場合には、固定期間の途中でも借り換えを検討することをお勧めします。諸費用を負担してでも今のうちに低金利で固定したほうが、将来の家計の見通しをつけやすくなり、結果的に負担総額を減らせる可能性もあるためです。また、借り換え後の優遇金利のメリットも受けられることがあるでしょう。
現在の固定期間終了後、もし変動金利型や固定期間選択型を選ぶ場合、金利が上昇してから慌てないように厳しく見積もり、対策を考えておくことをお勧めします。生活費、教育費、働き方、投資、保険、節税など、様々な面での見直し方法がありますので、総合的に見直すと良いでしょう。