私立中学校、ウチの年収ではムリ?なぜあの子の家庭が?

私立中学校、ウチの年収ではムリ?なぜあの子の家庭が?

「なんで◯◯ちゃんのところは私立中学校に行かせてもらえて、ウチはダメなの?」グサッと刺さる子どもの質問にどう答えますか?「だって〇〇ちゃんのところは、お父さんがお医者さんだし、お金持ちだもの・・・。」などと喉元から出かけてしまうかもしれませんね。しかし、それは妥当な理由なのでしょうか?

周りで私立中学校を受験をするのはそんなに高年収のご家庭ばかりでしょうか?
「あ、そういえば、私立中学校を目指すと言っていた◯◯君のところは、お父さんは公務員で、そんなに年収も高くないはずなのに、どうやってお金を工面しているんだろう?ウチの旦那と大して年収は変わらないはずなのに・・・ 。」などと、疑問を抱くのではないでしょうか?
もしくは、「あの子のお宅の給料で大丈夫なら、我が家も何とかなるのかも?」と期待するかもしれませんね。しかし、何とか私立中学校に行かせたとしても、その先の将来の家計は大丈夫なのかも気になるところです。
決して年収が高くないご家庭で、私立中学校に通わせ、将来の家計も維持するには、一体どうすればよいのでしょうか?

この記事で分かること
・私立中学に通わせられるかどうかは、年収だけでは決まらないこと。
・ライフプランに基づき、資産形成と出費のコントロールが重要なこと。

具体的には次の方法でこれらを見ます。

  • 将来の金融資産残高の推移をシミュレーション
  • 金融資産残高をプラスに維持できるように資産形成と出費を調整

「ウチは世間より高収入だから問題ないだろう。」「ウチはそんなに収入が無いからムリ!」と収入だけで判断せずに、計画的な資産形成と出費のコントロールで将来の家計を維持できるのかで判断しましょう。



私立中学校に通わせるための世帯年収は?

子どもを私立中学校に通わせている世帯の年間収入はどれくらいなのでしょうか?

「令和3年度 子供の学習費調査」(文部科学省)を加工して作成した次の表によると、約4割が世帯年収1200万円以上となっています。「あぁ、やっぱりそれぐらい稼いでないとダメかー。」と、ガッカリするのはちょっと待ってください。

私立中学校に通わせる世帯
世帯の年間収入段階構成比(%)
400万円未満3.8
400万円~599万円6.2
600万円~799万円15.4
800万円~999万円16.8
1000万円~1199万円17.7
1200万円以上40.1
合計100.0
「令和3年度 子供の学習費調査」(文部科学省) (※)を加工して作成
https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa03/gakushuuhi/1268091.htm
「統計表一覧」→「5 世帯の年間収入段階別,項目別経費の構成比」

よく見てみると、4分の1の世帯は799万円以下なのですね。「おっ、それならウチも?」と希望の光が見えてくるのではないでしょうか?

もちろん親の年収が高い方のほうが有利なのは確かですが、他の要素も関係がありそうですね。

では、他にどのような要素で決まるのでしょうか?この記事では、例として次のシナリオの設定条件で、シミュレーションしてみます。


シミュレーション
〜私立中学と年収!家計が苦しいなら計画的な資産形成で〜

シナリオの設定条件

  • 家族条件
家族条件歳(現在)生計から外れる
30100歳で死亡
27100歳で死亡
第1子023歳で独立
第2子3年後に誕生23歳で独立
  • 主な収支、資産条件

収入や支出、金融資産の異なる3つのケースを想定します。

主な比較項目金額 (万円)
ケース1ケース2ケース3
夫年収(※1)(夫30-60歳)1000450450
妻年収(※1)(妻30-60歳)200350350
世帯年収(※1)(夫30-60歳)1200800800
夫退職金(60歳)200015001500
夫年金(65-100歳)240144144
祖父母からの教育資金援助(大学進学時)なし2人の子に各300なし
積立投資(運用利回り5%)なしなしあり(※2)
夫30歳までに積み立てた投資の金融資産なしなし400
夫30歳時点の貯金300600600
住宅ローン年間返済
(夫36-63歳)
192120120
年間生活費(夫30歳-39歳)(※3)420288288
年間生活費(夫40歳-49歳)(※3)456324324
年間生活費(夫50歳-59歳)(※3)472340340
年間生活費(夫60歳-69歳)(※3)388292292
年間教育費(公立小学校高学年+通塾、2人の子各)61
年間教育費(私立中学校、2人の子各)143.6
※1:税金・社会保険料を引く前の年収。
※2:夫46歳まで年間40万円ずつ積立後、夫49-55歳で370万円ずつ換金。
※3:生活費には、食費(外食含む)、家具・家事用品、被覆・履物、保健医療、自動車・交通、教養娯楽、スポーツ、音楽、趣味、ペット、旅行などを含み、年間あたりにおしなべたものとする。
  • いずれのケースも中学校〜大学まですべて私立。
  • その他の詳細データはこちらを参照

1. 親の年収が高くても私立中学はきつい

ではまず、世帯年収1200万円もの高収入の家庭で、生活費(※)や住居費用等、様々な面でワンランク上の生活をした場合についてシミュレーションしてみます。
※生活費には、食費(外食含む)、家具・家事用品、被覆・履物、保健医療、自動車・交通、教養娯楽、スポーツ、音楽、趣味、ペット、旅行)などを含み、年間あたりにおしなべたものとする。

この場合、2人の子どもを私立中学校に通わせると、将来の家計はどうなるでしょうか?

1. 親の年収が高くても私立中学はきつい

なんと、これだけの高収入の家庭でも、教育費のピークの50代に資金ショートしてしまいましたね。いくら高年収でも、その分出費が多くては、その後の生活にしわ寄せが来てしまいます。

なお、このケースでは退職金や年金も多いのですが、現役時代にワンランク上の生活に慣れていたこともあり、老後もワンランク上の生活を継続し、老後も資金ショートする結果となってしまいました。

2. 祖父母の援助ありでもNG

では次に、世帯年収800万円とし、2人の子どもがそれぞれ大学進学時に、祖父母より300万円ずつ、教育資金援助を受けられた場合についてシミュレーションしてみます。
今回はそれなりに堅実に出費をコントロールし、ケース1より生活レベルを下げています。この場合、2人の子どもを私立中学校に通わせると、将来の家計はどうなるでしょうか?

2. 祖父母の援助ありでもNG

なんと、祖父母から300万円ずつ援助を受け、出費をコントロールしたにもかかわらず、資金ショートしてしまいますね。中学生の間は何とか持ったとしても、その後、中高一貫の私立高校へ進学、さらに大学も私立となると、将来の家計は維持できませんでした。やはり援助に頼るだけでなく、他の資産形成の自助努力も必要でしたね。

3. 計画的な資産形成で私立中学OK

では最後に、若い頃から計画的に資産形成し、出費もコントロールしてきた場合について、シミュレーションしてみます。

今回もケース2と同様に、世帯年収800万円としますが、堅実に貯金するだけでなく、計画的に積立投資(運用利回り5%)を20代から続け、30歳時点の金融資産残高も1000万円でバッチリ。その後も夫46歳まで年間40万円ずつ積立投資後、夫49-55歳で370万円ずつ換金することを想定します。

この場合、将来の家計はどうなるでしょうか?

3. 計画的な資産形成で私立中学OK

決して世帯年収がケース1のように高いわけではありませんが、若い頃からの自助努力、つまり資産形成と出費のコントロールにより、中学校以降は私立に通わせても、一生安心して暮らしていけそうですね。

まとめ

「子どもを私立中学校に行かせるためには、どれぐらいの年収が必要なのだろう?」というのは、気になるところですが、ほんの一要素でしかないことが分かりましたね。「子どもの教育には力を入れたい!私立中学校に行かせたい!」と強く願う場合、若い頃から計画的な資産形成と出費のコントロールを継続することが重要なのです。ぜひこの記事でご紹介したようなシミュレーションを実施し、将来の家計をやりくりするためにどれだけ自助努力すればよいのか、見積もってみてはいかがでしょうか?

とはいえ、個人の価値観や諸事情により、どうしても他のことにもお金をかけつつ、私立中学校への進学もせざるを得ないケースもあります。その場合、教育費のピークの時期や老後になってから慌てないように厳しく見積もり、対策を考えておくことをお勧めします。生活費、教育費、働き方、投資、保険、節税など、様々な面での見直し方法がありますので、総合的に見直すと良いでしょう。

個人の価値観、収入、資産、家族構成、家庭事情などにより、優先度は異なりますので、ご自身のケースではどうなのか試算してみなければわかりません。ここでご紹介したようなシミュレーションをもとに対策を考えたい方は、ぜひFP(ファイナンシャルプランナー)というお金の専門家に相談してみることをお勧めします。きっとあなたが気づいていない課題についても掘り起こし、広い視点からアドバイスがもらえることでしょう。



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