マイホーム購入!ようやく中高年で決心したが・・・
「持ち家か賃貸か?」悩ましい問題です。マイホームは人生最大の買い物、しかも今後何十年も住んでいくとなると、そんなに簡単に決断できないですよね。夫婦で物件を探してみたもののピンとくるものが見つからず、今の賃貸でもそれほど不都合を感じていなければ、どうしますか?住宅ローンの重荷をあえて背負わず、気楽な賃貸をズルズルと続けることになるかもしれませんね。
しかし、いざ子どもが大きくなってきて部屋の数が必要になったときに、さあ、そこで購入を決断するのでしょうか?これから教育費のピークを迎える中で、経済的にも厳しい判断を迫られるかもしれません。ならば、とりあえず別の広い賃貸に引っ越して、マイホームは将来退職金で買おう!という判断もありでしょうか?
いずれにしても、マイホーム購入を先延ばしにして、中高年でようやく決断した結果、将来の家計を維持できるのか気になるところです。出遅れた分、住宅ローンの支払いが遅くまで続いても大丈夫なのでしょうか?
・マイホーム購入の先延ばしによる
将来の家計への影響
・決断のため、優先度づけの重要性
具体的には次の方法でこれらを見ます。
- 将来の金融資産残高の推移をシミュレーション
- 金融資産残高をプラスに維持できるように購入予算・時期を調整
マイホーム購入の先延ばしによる、将来の家計への影響まで考慮して、適切な時期に優先度をつけて決断することをお勧めします。
住宅取得の年齢は?
皆さんは何歳ぐらいで住宅を取得しているのでしょうか?
令和3年度の「住宅市場動向調査」(国土交通省)のデータを元に作成した次の表によると、注文住宅(新築)、分譲戸建住宅、分譲マンションでは、いずれも30歳代での取得が4割前後を占め、最も多いことが分かります。現役時代にじっくり時間をかけて住宅ローンを返済していく世帯が多いのでしょう。
世帯主年齢→ | 30歳代 | 40歳代 | 50歳代 | 他年齢or 無回答 |
注文住宅(新築) | 44.8% | 23.3% | 8.2% | 23.70% |
分譲戸建住宅 | 47.0% | 27.7% | 5.3% | 20.00% |
分譲マンション | 38.2% | 27.9% | 12.1% | 21.80% |
令和3年度の「住宅市場動向調査」(国土交通省)(※)を加工して作成 ※https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001477550.pdf 注文住宅の調査地域は全国、その他住宅は三大都市圏での調査 |
ただ、40歳代も2〜3割を占めています。状況も様々かと思いますが、30代で物件を探してみたものの、購入に踏み切れずにズルズルと賃貸を続けていたケースもあるのではないでしょうか?
本記事では、購入をなかなか決断できず、出遅れた場合に、どのような将来が待っているのか、次のシナリオでシミュレーションしてみます。
シミュレーション
シナリオの設定条件
- 家族条件
家族条件 | 歳(現在) | 生計から外れる |
夫 | 30 | 100歳で死亡 |
妻 | 27 | 100歳で死亡 |
第1子 | 0 | 23歳で独立 |
第2子 | 3年後に誕生 | 23歳で独立 |
- その他の詳細データはこちらを参照。
1. 子ども中学進学時に購入
ではまず、30代でマイホーム購入に踏み切れず、ズルズルと賃貸を続けて、子どもが中学校に進学するときに購入したケースについて、シミュレーションしてみます。
このケースの詳細な設定条件
- 30代でマイホーム探しをしてみたものの、決断できなかった。
- 小学校に入学する頃、夫婦二人用の賃貸は手狭になってきたので、より広い賃貸に引っ越した。
- 中学校に進学するころに子ども部屋が欲しくなり、また、物価とともに賃料も上がってきたことも後押しとなり、ようやくマイホーム購入を決断した。
- 学区・通学・部屋の数など子どもの制約から、価格帯を妥協できなかった。
物件 | 万円 | 年齢 |
物件価格(購入時) | 3800 | 夫43歳 |
マイホーム頭金 | 1000 | 夫43歳 |
住宅資金援助(親) | 300 | 夫43歳 |
住宅ローン借入 | 2500 | 夫43歳時 |
住宅関連支出 | 万円/年 | 年齢 | 変動率(%) |
賃貸支払い | 84 | 夫-35歳 | 2 |
120 | 夫36歳-42歳 | 2 | |
住宅ローン返済 (元利金等、固定2%) | 120 | 夫43歳-70歳 | − |
固定資産税 都市計画税 | 12 | 夫43歳-93歳 | 0 |
住宅維持(積立含) | 36 | 夫43歳-88歳 | 0 |
※賃貸支払い額は夫30歳時点の水準で表示 |
すると、将来の家計はどうなるでしょうか?
このケースでは住宅ローン返済が70歳まで続いてしまい、せっかく定年時に退職金をもらっても、その後一気に金融資産を取り崩していきます。その結果、80代以降で資金ショートを起こしてしまいますね。賃貸支払いに消えていったお金を住宅ローンに回せていたらと思うと、後悔するかもしれません。
2. 子ども独立後に購入
では次に、子どもが独立してからようやく購入したケースについて、シミュレーションしてみます。
このケースの詳細な設定条件
- 30代でマイホーム探しをしてみたものの、決断できなかった。
- 小学校に入学する頃、夫婦二人用の賃貸は手狭になってきたので、より広い賃貸に引っ越した。
- ケース1のような状況を避けるため、子どもが独立するまでは賃貸で我慢した。
- 子どもが独立後に、夫婦二人用のダウンサイズした物件の購入を決断した。
物件 | 万円 | 年齢 |
物件価格(購入時) | 2100 | 夫57歳 |
マイホーム頭金 | 1000 | 夫57歳 |
住宅資金援助(親) | 300 | 夫57歳 |
住宅ローン借入 | 800 | 夫57歳 |
住宅関連支出 | 万円/年 | 年齢 | 変動率(%) |
賃貸支払い | 84 | 夫-35歳 | 2 |
120 | 夫36歳-56歳 | 2 | |
住宅ローン返済 (元利金等、固定2%) | 86 | 夫57歳-67歳 | − |
固定資産税 都市計画税 | 12 | 夫57歳-93歳 | 0 |
住宅維持(積立含) | 36 | 夫57歳-88歳 | 0 |
※賃貸支払い額は夫30歳時点の水準で表示 |
この場合、将来の家計はどうなるでしょうか?
何とか将来の家計を維持できそうですね。
このケースでは、子どもが独立後だからこそ、夫婦二人が暮らしていければ十分で、物件の価格帯もケース1.より下げることができたのです。しかし、子どもと一緒に暮らす最も家族らしい時期をマイホームで生活したいという夢があったとすると、かないませんでしたね。
3. 子ども就学前に購入
では最後に、子どもが就学前にマイホーム購入を決断できたケースについて、シミュレーションしてみます。
このケースの詳細な設定条件
- 子どもが就学前にマイホーム探しをして、購入を決断した。
- 選んだマイホームは理想と異なる部分もあったが、家計維持を前提とした価格帯で、子どもと一緒にマイホームで暮らすことや、学区など優先事項を明確にし、購入を決断した。
物件 | 万円 | 年齢 |
物件価格(購入時) | 3800 | 夫36歳 |
マイホーム頭金 | 1000 | 夫36歳 |
住宅資金援助(親) | 300 | 夫36歳 |
住宅ローン借入 | 2500 | 夫36歳 |
住宅関連支出 | 万円/年 | 年齢 | 変動率(%) |
賃貸支払い | 84 | 夫-35歳 | 2 |
住宅ローン返済 (元利金等、固定2%) | 120 | 夫36歳-63歳 | − |
固定資産税 都市計画税 | 12 | 夫36歳-93歳 | 0 |
住宅維持(積立含) | 36 | 夫36歳-88歳 | 0 |
※賃貸支払い額は夫30歳時点の水準で表示 |
この場合、将来の家計はどうなるでしょうか?
やはり若さは武器です。優先事項を明確にすることで早い段階で購入を決断し、現役時代に時間をかけて住宅ローンを返済できました。これで、優先事項を満たしつつ、家計も維持できそうですね。
まとめ
「持ち家か賃貸か?」そんなに簡単に決断できるなら、苦労しないですよね。かといって、ズルズルと賃貸を続け、ケース1.のように中途半端な時期で購入すると、子どもの制約も発生し、物件の価格帯も妥協しにくくなるかもしれません。その場合、「将来の家計を維持する」という絶対条件を満たすには、ケース2.のように何かを犠牲にしなければいけないこともあるでしょう。
いずれにしても、納得して購入を決めるためには、ケース3.のように早い段階で優先度を明確にしておくことが重要です。そうすることで、家計の維持を前提に、優先度の高いものを実現でき、あえて優先度を下げた点についても納得できるのではないでしょうか?
もちろん、マイホーム購入後は簡単に転居できなくなりますので、子どもの進路や将来の働き方、老後の過ごし方など、不確定要素がある中で、早く購入することにはリスクも伴います。家計の維持を前提に、将来の不確定要素に対する覚悟(例えば、もし転勤があっても引っ越せない、子どもが私立を希望しても中学までは公立、など)も必要となります。
とはいえ、個人の価値観や諸事情により、どうしても決断を先延ばしにせざるを得ないケースもあります。その場合、将来に資金ショートして慌てないように厳しく見積もり、対策を考えておくことをお勧めします。生活費、教育費、働き方、投資、保険、節税など、様々な面での見直し方法がありますので、総合的に見直すと良いでしょう。