将来の生活費どうする?物価上昇への適応のヒント!
お店で買い物をしようとしたら、以前と比べて随分と値上がっていたりなど、物価上昇を肌で感じているのではないでしょうか?面白くないので買い控えたり、別の店に期待してハシゴしたり・・・。そんな経験は無いでしょうか?
食費、光熱費、家具など生活に欠かせない様々なものが値上がっており、将来の生活も不安になりますよね。今の生活でさえ精一杯なのに、老後資金など考えたくないかもしれませんが、物価の上昇による影響の大きさを把握し、長期的に適応していくことは、将来の生活を守るために重要なことです。
・物価上昇の将来家計への影響
・物価上昇への適応のヒント
具体的には次の方法で分かります。
- 将来の金融資産残高をシミュレーション
- 金融資産残高をプラスに維持できるように生活費の変動率を調整
物価上昇率は自分の力で変えられなくても、生活費の変動率はある程度自分でコントロールできるのです。
統計から分かる物価上昇
総務省統計局の消費者物価指数(CPI)結果によると、2022年(令和4年)平均の総合指数は前年比2.5%の上昇です。費目ごとの指数の前年比を見ると、特に、光熱水道費14.8%、食料は4.8%、家具・家事用品は3.8%の上昇と顕著です。日常生活で身近なものの指数がこれだけ上昇しているのですから、物価上昇を肌で感じやすい状況ですね。
消費者物価指数 | 総合 | 食料 | 光熱水道 | 家具・家事用品 | その他 |
指数前年比(%) | 2.5 | 4.5 | 14.8 | 3.8 | 省略 |
「消費者物価指数(CPI)結果」(総務省統計局) を加工して作成 ( (2020年基準 消費者物価指数 2022年(令和4年)平均) |
このままだと将来の生活はどうなってしまうのでしょうか?次の例でシミュレーションしてみましょう。
シミュレーション
シナリオの設定条件
家族条件 | 歳(現在) | 生計から外れる |
夫 | 35 | 100歳で死亡 |
妻 | 32 | 100歳で死亡 |
第1子 | 5 | 23歳で独立 |
第2子 | 2 | 23歳で独立 |
支出項目 | 万円/年 | 年齢 |
生活費 | 300 | 夫35歳-39歳 |
336 | 夫40歳-49歳 | |
352 | 夫50歳-59歳 | |
328 | 夫60歳-69歳 | |
211 | 夫70歳-89歳 | |
106 | 夫90歳-99歳 | |
32 | 妻98歳-100歳 |
(夫35歳時点の物価水準で表示)
- 60代は子どもも独立しているので生活費もダウンサイズする。
- 70代、80代と徐々に体力も衰えてくるので、生活費も段階的に減らす。
- 90代は別途介護費用を計上する。
- 生活費以外の支出項目や、収入の詳細データはこちらを参照。
1. 物価上昇率2.5%のまま
仮に物価が2.5%すつ上昇し続けた場合はどうなるでしょうか?
あぁやっぱり・・・と思ったかもしれませんね。子どもが独立前に金融資産残高はマイナスになり、退職金で一時的にはプラスに回復したのもつかの間、あっという間にマイナスに転落してしまいました。
2. 物価上昇率2%なら?
では、物価上昇率をもう少し楽観的に考え、2%と設定してみるとどうでしようか?
現役中は何とか持ちこたえられそうですが、それでも老後はマイナスになってしまいます。
3. 物価上昇に生活費適応
では、物価上昇率をどこまで楽観的に考えて良いのでしょうか?何十年も先の物価上昇率の予測は難しいので、ここまで楽観的に考えて大丈夫ということはありません。今の生活も大切にしながら、将来の状況に応じて柔軟に対応することも必要です。
ケース2と同様に物価上昇率が2%で、定年退職を迎える時点で、まだ2%上昇の傾向が変わらない場合、老後の生活でどのように適応すれば良いでしょうか?
徐々に体力も衰えてきますので、生活費は全般的に減ってきます。そのため、必ずしも「物価上昇率=生活費の変動率」ではなく、「物価上昇率>生活費の変動率」としてみてはいかがでしょうか?つまり、物価が2%上がったとしても、生活費は1.5%しか上げないというように、上げ方を緩やかにするのです。
ここでは生活費の変動率を次のように設定してシミュレーションしてみましょう。
支出条件 | 万円/年 | 年齢 | 変動率(%) |
生活費 | 300 | 夫30歳-39歳 | 2 |
336 | 夫40歳-49歳 | 2 | |
352 | 夫50歳-59歳 | 2 | |
328 | 夫60歳-69歳 | 1.5 | |
211 | 夫70歳-89歳 | 1.5 | |
106 | 夫90歳-99歳 | 1 | |
32 | 妻98歳-100歳 | 1 |
このように、現役中は物価上昇率に合わせて2%、60代以降の変動率は徐々に低下させてみると、次のような結果になります。
これなら老後の生活も維持でき、介護に必要なお金も残せそうですね。
ちなみに、「物価上昇率 > 生活費の変動率」ですので、実質的な生活レベルは徐々に下がってきます。例えば夫60歳〜69歳の間、物価上昇率2%、生活費の変動率1.5%としたときに、年間生活費の額面を60歳時点の物価水準に割り戻して実質価値で考えると、次のようになります。
歳→ | 60 | 61 | 62 | 63 | 64 | 65 | 66 | 67 | 68 | 69 | 70 |
額面(万円)※1→ | 476 | 486 | 495 | 505 | 515 | 526 | 536 | 547 | 558 | 569 | 580 |
実質価値(万円)※2→ | 476 | 474 | 471 | 469 | 464 | 462 | 460 | 458 | 455 | 453 | 451 |
※1:生活費は変動率1.5%で増加。 ※2:額面を物価上昇率2%で割り戻し、60歳時点の物価水準で表現。 |
年間の生活費の実質価値は徐々に下がっていくものの、表面的には額面が上がっていくため、感覚的にも受け入れやすいのではないでしょうか?
まとめ
物価上昇率により将来必要なお金は大きく変わりますので、ある程度厳しく見積もることは必要です。しかし、何十年も先の物価上昇率は予測が難しいですから、状況を見ながら生活費を柔軟に見直していくことも必要です。その際、必ずしも生活費の金額を下げる必要があるとは限らず、今回のケース3.のように、生活費の金額の上げ方を控えめにすることで、将来の見通しを立てられることもあります。生活費の上げ方を物価に比べて緩やかに上げるのであれば、急に生活レベルを変更することにはならず、受け入れやすいのではないでしようか?
とはいえ、個人の価値観や諸事情により、生活費で調整できないケースもあります。老後になってから慌てないように、現役のうちからある程度、将来の物価上昇率を厳しく見積もり、対策を考えておくことをお勧めします。生活費、教育費、働き方、投資、保険、節税など、様々な面での見直し方法がありますので、総合的に見直すと良いでしょう。