派遣から正社員に転職で給料は?長期的なメリットとデメリットを比較!

派遣から正社員に転職で給料は?長期的なメリットとデメリットを比較!

「えっ、派遣から正社員に転職すると給料が下がるの?」会社や職種にもよりますが、特に20代など若い世代では、正社員でも月給20万円前後などと低く感じることもあるでしょう。

一方の派遣社員の場合、毎月30万円近くも稼いでいたら、若いうちは不自由なく暮らせるでしょう。しかも仕事はそこそこ気楽で、厄介な話にも巻き込まれにくい。重い責任を背負って残業している正社員たちを後目に定時で帰宅することもできる。正社員への転職をためらってしまうのも無理もありませんね。

でも、将来結婚したり子どもができたりしても、大丈夫なのでしょうか?やはり安定した正社員を目指すべきなのでしょうか?派遣vs正社員でメリット・デメリットが色々とありそうですね。一体どう判断すればよいのでしょうか?

この記事はこんな人におすすめ
・派遣から正社員へ転職するか迷っている若い世代
・派遣vs正社員のメリット・デメリットを比較して判断したい人
・結婚したり子どもができてからも安心して生活したい人

派遣から正社員に転職すべきか?

結婚や出産を希望するなら、正社員に転職することをお勧めします。なぜなら、これらの実現のためには「長期的なメリット」が重要だからです。

派遣vs正社員:短期・長期でのメリット・デメリット

短期的には派遣のメリットのほうが大きく感じるかもしれません。しかし、次の表のとおり、メリットとデメリットは短期・長期で逆転することもあるのです。目先の短期メリットを捨てがたいかもしれませんが、短期・長期の違いを考慮して判断する必要あります。

短期・長期でのメリット・デメリットの比較
(○:メリット、×:デメリット、△どちらとも言えない)
比較項目短期的長期的
派遣社員正社員派遣社員正社員
金銭的自由
(以下の関連項目参照※1)
×
時間的自由△※2
仕事のストレス
(責任、人間関係など)
××
雇用の安定性×
社会的信用
(ローンの組みやすさなど)
××
※1:金銭的自由の関連項目
時給×
昇給××
ボーナス××
福利厚生××
退職金××
注意:本表は一般的な特徴を表したものであり、個々のケースでは異なることもあります。
※2:派遣の場合、収入を補うために多くの仕事を詰め込む必要があり、時間的自由が制限されることもある。

正社員の長期的メリットが重要なのは?

結婚や出産を考えている場合は、正社員の長期的なメリットを重視することをお勧めします。なぜなら、長期的にかけられるお金に、家族の生活や人生が左右されるからです。

  • 教育方針、生活レベル、住宅、趣味などへのかけ方
  • 子どもの進路・進学先の選択肢

派遣で昇給やボーナスもないまま、これらに必要なお金が不足したらどうでしょうか?それこそ他のハードな仕事に転職したり、複数の職業をかけもちする必要が出てきて、本末転倒ですね。

そのため、正社員の長期的なメリットを重視すべきなのです。

派遣と正社員で収入の違いは?

正社員にそんなに長期的なメリットがあるのでしょうか?派遣社員と収入を比較してみましょう。

  • 正社員の給与
    社員(正職員)の平均給与(令和4年における1年間の支給総額の平均)は523 万円となっています。
    出典:「令和4年度 民間給与実態統計調査」(国税庁)(https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2022/pdf/002.pdf
  • 派遣労働者の賃金
    派遣労働者の賃金(8時間換算)(平均)は15,698円となっています。
    出典:「令和3年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/content/11654000/001132162.pdf
    単純に毎月20時間 x 12か月働いたとして計算すると、年間で約377万円になります。

このように全年齢層の平均で見たときには、正社員のほうに軍配が上がるのですね。これだけ見ると、正社員が羨ましい、正社員に転職したい人が多そうですが、実態について見てみましょう。

派遣労働者の希望と理由

派遣労働者は今後、どのような働き方を希望しているのでしょうか?
「令和4年派遣労働者実態調査の概況」(厚生労働省)のデータをもとに作成した次の表によると、正社員として働きたい人よりも、派遣労働者として働きたい人のほうが多い実態が分かります。

今後の働き方の希望(男女計) (%)
派遣労働者として働きたい34.2
派遣労働者以外の就業形態で働きたい: 37.0(100.0)正社員として働きたい(74.3)27.5
パート等の正社員以外の就業形態で働きたい(15.9)5.9
その他28.0
不明0.8
出典:「令和4年派遣労働者実態調査の概況」(厚生労働省)(※)のデータをもとに作成。「派遣労働者以外の就業形態で働きたい」の内訳の数値はデータをもとに筆者計算(37.0% * 74.3% = 27.5%, 37.0% * 15.9% = 5.9%)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/haken/22/dl/haken22_2_05.pdf

では、あえて派遣労働者を希望して働く理由は何なのでしょうか?
同調査のデータをもとに作成した次の表によると、「自分の都合の良い時間に働きたいから」など、肯定的な理由も目立ちますね。

派遣労働者として働いている理由(複数回答)(男女計) (%)
自分の都合のよい時間に働きたいから30.8
家計の補助・学費等を得たいから18.6
家事・育児・介護等と両立しやすいから11.7
専門的な技能等をいかせるから13.8
正規の職員・従業員の仕事がないから30.4
その他40.6
不明0.8
出典:「令和4年派遣労働者実態調査の概況」(厚生労働省)(※)のデータをもとに作成。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/haken/22/dl/haken22_2_07.pdf

あえて派遣労働者を希望して働くのは自由ですが、結婚したり子供ができたりした後の家計状況も気になるところです。そこで、この記事では次のシナリオの設定条件で、将来の家計をシミュレーションしてみます。

シミュレーション
〜夫婦の派遣vs正社員で将来の家計は?〜

シナリオの設定条件

  • 家族条件
家族条件歳(現在)生計から外れる
28100歳で死亡
25100歳で死亡
第1子2年後に誕生23歳で独立
  • 比較条件
比較項目ケース1ケース2ケース3
雇用派遣正社員正社員
昇給、ボーナス、退職金なしありあり
雇用派遣派遣正社員
昇給、ボーナス、退職金なしなしあり
生活レベル質素質素ゆとり
住居一生賃貸(84万円/月、変動率2%)夫36歳でマイホーム(2300万円)夫36歳でマイホーム(3600万円)
子の大学国立国立私立
  • その他の詳細データはこちらを参照。

1. 夫婦ともに派遣社員

ではまず、夫婦ともに派遣社員を続けた場合について、シミュレーションしてみます。このケースでは、後先考えずに結婚・出産もしたものとします。この場合、将来の家計はどうなるでしょうか?

1. 夫婦ともに派遣社員
1. 夫婦ともに派遣社員

お話になりませんね。妻が出産前から育児のために5年間仕事をせず、夫の給料だけではあっという間に貯金を取り壊し、資金ショートしてしまいました。妻が仕事に復帰した後も、子どもの成長や進学とともに支出も増える一方で、派遣の給料は上がらず、収入が支出を下回る状況が続いてしまいます。

短期的には派遣のメリットが魅力に思えても、長期的なデメリットのほうが大きすぎです。収入を補うため仕事を追加するなど、相当な努力が求められそうですね。

2. 夫は正社員、妻は派遣社員

では次に、夫が正社員、妻が派遣社員を続けた場合について、シミュレーションしてみます。このケースでは、夫が安定的な経済の柱となり、妻が出産や育児に合わせて仕事を調整しながら働くことにしたのです。この場合、将来の家計はどうなるのでしょうか?

2. 夫は正社員、妻は派遣社員
2. 夫は正社員、妻は派遣社員

おおっ、これなら一生安心して暮らしていけそうですね。正社員の社会的信用で住宅ローンも組むことができ、子どもの教育費ピークにも耐えることができました。やはり、夫婦のうちいずれかが経済の柱となることの効果は大きいですね。

3. 夫婦ともに正社員

では最後に、夫婦ともに正社員として働き続けた場合についてシミュレーションしてみます。このケースでは、妻は出産・育児のため5年間休職しましたが、出産手当金や育児休業給付金もバッチリ受け取りました。また、仕事に復帰後も昇給やボーナス、さらに退職金までもらえたのです!

ゆとりのある生活をしつつ、マイホームにもこだわり、子どもも希望通り私立大学に行かせて…。この場合、将来の家計はどうなるのでしょうか?

3. 夫婦ともに正社員
3. 夫婦ともに正社員

おおっ、「たくさん稼いでたくさん消費」しても、一生やっていけそうですね。さすが2馬力は違います!

まとめ

結婚や出産を希望するなら、正社員に転職することをお勧めします。それは長期的なメリットが大きいためです。

短期的な視点だけでは、派遣のメリットのほうが大きく感じるかもしれませんが、家族の生活や人生を大きく左右する長期的なメリット・デメリットも踏まえて判断することが重要なのです。この記事では、夫婦の派遣vs正社員の各パターンで将来の家計をシミュレーションし、正社員の長期的なメリットについて検証しました。

とはいえ、短期的なメリットをどうしても捨てられない、正社員のデメリットを覚悟できないという場合もあるでしょう。その場合、結婚したり子供ができてから家計が火だるまになって慌てないように厳しく見積もり、対策を考えておくことをお勧めします。生活費、教育費、働き方、投資、保険、節税など、様々な面での見直し方法がありますので、総合的に見直すと良いでしょう。

個人の価値観、収入、資産、家族構成、家庭事情などにより、優先度は異なりますので、ご自身のケースではどうなのか試算してみなければわかりません。ここでご紹介したようなシミュレーションをもとに対策を考えたい方は、ぜひFP(ファイナンシャルプランナー)というお金の専門家に相談してみることをお勧めします。きっとあなたが気づいていない課題についても掘り起こし、広い視点からアドバイスがもらえることでしょう。

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